特許収入は都内10位 少数精鋭の隠れた名門国立「電気通信大学」とはどのような大学なのか

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都内大学の特許収入ランキングで10位に入るも、一般的な知名度が低い名門国立大学・電気通信大学。そんな同大の魅力について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

目次

国内の大学で広まる産学官連携

 国立大学を中心に、産学官連携の研究開発や実用化の動きが広まっています。

 産学官連携の先駆けでもあるアメリカは1980年代に製造業の深刻な不振を問題視し、最先端の技術開発を重視。

 大学が研究開発した技術を民間企業がライセンスを得て実用化したり、大学発のベンチャー企業が1990年以降増えたりなど、特にIT分野でその力が発揮されてきました。

 このことからも、大学や国、民間企業が互いに最新技術を開発することが、結果として新たな産業や雇用を生み出していることがわかります。

 産学官連携は国際社会の競争で勝つためにも、なくてはならない事業となっているのです。

特許収入が都内大学ベスト10入り

 日本の大学では理系学部を中心とした特許収入が年々増加しています。2011年度の大学の特許収入額は、約11億円でしたが2018年度には44億円を突破しました。

 大学の特許収入ランキング(2018年度)を東京都内の大学別でみると、ベスト10には知名度の高い大学や、医学部や歯学部を有する大学が多くなっていますが、その中に国立大学の電気通信大学(調布市調布ヶ丘)が名を連ねています。

調布市調布ヶ丘にある電気通信大学(画像:(C)Google)

 学生数も少なく、1学域3類(1学部3学科とほぼ同義)というお世辞にも「大所帯」とは言えない電気通信大学ですが、いったいなぜこのような結果を残しているのでしょうか。

発祥は通信技術者の養成機関

 電気通信大学の歴史は大正期にさかのぼります。

 1918(大正7)年に無線などの通信技術者を育成する機関として設置されたのが始まりで、戦後、文部省の管轄となり1949(昭和24)年に現在に続く電気通信大学となりました。

 学部生は、夜間課程を含めても3000人未満と少数精鋭。2018年度の卒業生の62%が大学院に進学しています。

 電気通信大学の特徴は、他の大学に比べて学部学科の編成や名称変更が頻繁に行われている点です。

 これは、技術発達などでめまぐるしく状況が変わる理工系において、時代に沿った学びができるよう大学側が臨機応変に対応している表れと言えます。

電気通信大学の教育体系(画像:電気通信大学)

 2016年度からは創立100周年に向けて学部学科の見直しを行い、学部学科を撤廃。1学域3類を導入しました。学科同士の壁を取り払い、1年次は共通科目を受講する取り組みをスタートさせるなど、積極的に新しい試みを取り入れています。

 2年次は学生本人の志望と成績によって類が決まるシステムとなっており、学業を怠ると望む類に入れません。「勉強は学生の本分」としているのです。

年間特許収入は1300万円超

華々しいイメージとはかけ離れ地道に研究する印象のある電気通信大学は、東京都内の大学の特許収入ランキング(2018年度)で10位にランクインしています。

1位:東京大学(文京区本郷)
2位:東京工業大学(目黒区大岡山)
3位:北里大学(港区白金)
4位:日本大学(千代田区九段南)
5位:早稲田大学(新宿区戸塚町)
6位:慶応義塾大学(港区三田)
7位:東京医科歯科大学(文京区湯島)
8位:明治大学(千代田区神田駿河台)
9位:東京理科大学(新宿区神楽坂)
10位:電気通信大学(調布市調布ケ丘)

 東大を筆頭に、医学部を有する大学や規模の大きい理工系大学、早稲田大学や慶応義塾大学、日本大学、明治大学といった、知名度抜群かつ学生数も多い大学がランキングを占める中、電気通信大学の存在は目を引きます。

電気通信大学のウェブサイト(画像:電気通信大学)

 2018年度の電気通信大学の特許収入は1300万円を超えました。著作権や実験結果のデータ、実験試料の成果有体物の契約で発生した収入も含めると、実に約1800万上ります。

 1995(平成7)年度は17件だった他機関や企業との共同研究は、2018年度には197件に増加しています。

 電気通信大学の特許等の大きな収入額は、一朝一夕で築き上げたものではありません。積極的に国内外の企業や公的機関と協力し、新技術の開発を地道に行ってきた結果と言えます。

大学発ベンチャー企業も多い

 特許収入の面でも確実に実績を上げている電気通信大学ですが、実は大学発ベンチャー企業にも力を入れています。

電気通信大学発ベンチャーの一覧。2020年3月23日時点で29社を数える(画像:電気通信大学)

 大学の研究データを宝の持ち腐れにせず、民間企業などの協力を受けて商品開発やサービス提供をしていくのが大学発ベンチャー企業の役割です。

 電気通信大学はIT分野を中心に、これまで培った研究を生かすベンチャー企業を立ち上げています。

 2017年度までに認定されたベンチャー企業は27社で、売上高は約13億に上ります。また168人という雇用創出を生み出しています。

マンモス大学でなくてもできることはある

 大学の規模を考えると、いくら理系大学であっても特許収入やベンチャー企業設立の実績を出すことが、かなりの困難を伴うことは言うまでもありません。

 この結果は、2000年代以降加速した産学官連携などの新しい試みに積極的に参加し、それまで培ってきた研究力を発揮した証と呼べるでしょう。

3月24日に発表された「THE世界大学ランキング日本版2020」の結果。電気通信大学は国内41位にランクインしている(画像:ベネッセホールディングス)

 産学官連携を通じて学生と企業の交流を活発化すれば、講義や学内の実験研究だけでは得られない経験ができ、新しい技術を開発するきっかけにもなるのです。

 規模も比較的小さく、極めて専門性の高い分野を学ぶことから一般的な知名度が低い電気通信大学ですが、21世紀に入ってから得意分野を伸ばし、着実に力を発揮している印象を受けます。

 マンモス大学でなくても研究力やチャレンジ精神を兼ね備えていれば、十分に社会還元できるのです。

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