データサイエンスやアントレプレナーなど、これまでの日本の大学に少なかった学部を新設しているのが武蔵野大学です。その具体的な取り組みについて、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。
さまざまな分野で求められる「データサイエンティスト」
現在、企業の商品開発はビッグデータ(大容量のデジタルデータ)を解析することが求められています。確実に売れる商品を作るために、インターネット技術で得られる情報を活用し、消費者の隠れた嗜好(しこう)や動向を掘り下げていくことが市場開拓・拡大には欠かせません。
また、ビッグデータ解析は経済分野だけではなく、気象予測や新型コロナウイルスの感染拡大の予想などにも使われています。
しかし、解析に関する専門知識を持つ「データサイエンティスト」は常に不足しています。
こうした状況を改善すべく、2017年度に滋賀大学(滋賀県彦根市)が、翌年に横浜市立大学(横浜市)がデータサイエンス学部を新設しました。続く2019年度、私立大学として初めて武蔵野大学(江東区有明)がデータサイエンス学部を設置しました。
他大学でもデータサイエンスに関する学部学科の新設が見られ、注目されています。
女子大学から総合大学へ
武蔵野大学の起源は、仏教学者の高楠順次郎が1924(大正13)年に築地本願寺内に開校した武蔵女子学院で、2003(平成15)年に武蔵野女子大学から現校名へ改称しています。
浄土真宗本願寺派が運営に携わる仏教系大学で、2004年度以降に共学大学として歩み始めてから、今日に至るまで新たな学部を新設し、文系大学から総合大学へと変化してきました。
学部学科は、
●文学部
・日本文学文化学科
●グローバル学部
・グローバルコミュニケーション学科
・日本語コミュニケーション学科
・グローバルビジネス学科
●法学部
・法律学科
・政治学科
●経済学部
・経済学科
●経営学部
・経営学科
・会計ガバナンス学科
●データイサイエンス学部
・データイサイエンス学科
●人間科学部
・人間科学科
・社会福祉学科
●工学部
・環境システム学科
・数理工学科
・建築デザイン学科
●教育学部
・教育学科
・幼児教育学科
●薬学部
・薬学科
●看護学部
・看護学科
の11学部19学科で、留学生を含む9200人の学部生が学んでいます(2020年度)。
元女子大学ではあるものの、学部生の現在の男女比率は女子57.5%、男子42.5%と共学化が進んでいます。
共学化で多種多様な学生を取り囲むことに成功
武蔵野大学は共学化を皮切りに薬学部・看護学部を設置し、大胆な拡大路線へとかじを切りました。
そのため、前身の武蔵女子学院が1929(昭和4)年に移転してから続く武蔵野キャンパス(西東京市新町)のほか、2012年に有明キャンパス(江東区有明)を開校。現在は2キャンパス体制を敷いています。
武蔵野大学は新設学部を理系学部に集中したことで、女子大学から共学化を押し進めただけでなく、多種多様な学生を取り囲むことに成功しています。
日本初となるアントレプレナーシップ学部も
また2019年度のデータサイエンス学部に続いて、2021年4月から日本初となるアントレプレナーシップ学部が開設されます。
同学部のホームページには「アントレプレナーシップ(企業家精神)とは、高い志と倫理観に基づき、失敗を恐れずに踏み出し、新たな価値を見いだし、創造していくマインド」と記しています。
グローバル化が急激に進み、さらに新型コロナウイルスの感染拡大で、働き方や学び方は根底から覆されようとしています。
そのため、これまでの常識にとらわれず、柔軟な発想で新たなサービスを生み出すことが一層求められます。
アントレプレナーシップ学部では学生が1年次に寮で生活を共にするなど、これまでの武蔵野大学にはない新たな試みは注目を集めそうです。