東京メトロ大手町駅で働く駅員さんに、JR東京駅までの行き方をじっくりレクチャーしてもらいました。
迷いたくない! 東京メトロ最大のターミナル「大手町駅」
大都会、東京のターミナル駅は極めて複雑。時に「迷宮」「ダンジョン」などとも呼ばれ、もしかして永遠に攻略できないのでは……と不安視している人も少なくないのではないでしょうか。
かくいう筆者も、東京在住歴10年以上を経過した今もなお、ターミナル駅周辺でよく迷います。なかでも難解に感じているのが、東京メトロ最大のターミナル「大手町駅」。
同駅からは、JR東京駅へ徒歩で移動することも可能と聞きます。ですが歩いている途中でふと混乱するのです。今、私はどこにいるのだろうと。新幹線に乗り遅れそうになったことも、一度や二度ではありません。
どうしたら迷わずにたどり着けるのか、教えてほしい……。そんなお願いをしたところ、なんと大手町駅での勤務歴8年という、1級駅務係 田邉 賢さんが答えてくれました。
大手町の駅員さんは1日に数十回、道を聞かれていた
「勤務中に道を聞かれることは多いです」と話す田邉さん。1日あたり数十人に道を尋ねられることもあるといいます。取材当日も、行く先々で「駅員さん!」と声がかかり、道を尋ねられていました。
単純じゃない構造の駅の説明は、もちろん単純にはいかないもの。お客さんごと、さまざまなケースがあるため、都度「このお客さんにとって最適なルートはどこなのか」「どう伝えるのがベストか」を考え、対応をしているそうです。多種多様な質問に対し、するすると回答する一方で「この年になってやっと、尋ねられたとき、どきどきしなくなりました」とも話します。
今回は下記のケースに絞って、道順を教えてもらうことにしました。
・目的地はJR東京駅
・エレベーターのない場所(階段とエスカレーターのみ)での移動を含む
2時間近くかけて、じっくりレクチャーしていただいた内容をもとに、下記の順番で解説していきたいと思います。
・まず、最初に知っておきたいこと
・東京メトロ各線ごとのJR東京駅への行き方
・迷子が不安な人に覚えておいてほしいこと
まず、最初に知っておきたい。各線ごとに異なる「大手町駅」の位置
ところで、そもそも大手町と名のつく駅でも、各線ごと、JR東京駅への近さが全く異なります……というのは、詳しい人やヘビーユーザーにとっては周知の事実なのでしょう。ですが、そうでなければ「え、同じ駅名なのに、こんなに離れているの?」と衝撃を受ける距離感なのでは。各線の位置は以下のとおりです。
JR東京駅に最も近いのは「東西線」。それ以外の大手町駅は正直なところ、近くはありません。田邉さんも「迷いやすい人には、東西線以外の大手町駅からJR東京駅へ移動することは、あまりおすすめしていないです」と話します。
ですが、東西線以外の路線には、別の駅で下車するなど、ほかの選択肢が用意されているとのこと。そんな「ほかの選択肢」の話を交えながら、次ページからは「東西線」「丸ノ内線」「半蔵門線」「千代田線」の順番で、各線の特徴と、JR東京駅への行き方を見ていきたいと思います。
いちばん近い「東西線」大手町駅、ほかの線にはない特徴も
JR東京駅から最も近い東西線には、ほかの線にはない特徴があるといいます。
「電車に乗っていると『次は〇〇駅です。JR線は乗り換えです』という放送が流れますよね。あの放送で、大手町駅へ到着するとき、JR乗り換えを示唆しているのは、東西線だけなんです」(田邉さん)
そうなんですね。そんな配慮がなされていたとは。
東西線には、4つの改札(東、中央東、中央、西)がありますが、JR東京駅への最短ルートは「東改札」からの道のりとのこと。東改札は、いちばん日本橋駅側にある改札です。
「東改札」からJR東京駅へ向かう方法
東改札を出てすぐの案内表示に注目すると、「丸の内口」と「八重洲口」、2方向の道筋があることに気づきます。
どちらへ向かってもJR東京駅には到着しますが、両者のおおまかな違いは以下。
●丸の内口方面(B4、B5)
・丸ビルや新丸ビル、KITTEなどに近い
●八重洲口方面(B8b)
・東京駅一番街や大丸東京店に近い
・新幹線乗り場が近い
丸の内口へ向かう場合には、改札を出たら「B4・B5 JR東京駅丸の内口」と書いてある方へ直進。
左右にポスターが貼られた通路をしばらく歩くと、雑貨や飲食店が密集するエリア(グランスタ丸の内)へ到着します。そこから少し歩いた先に「丸の内地下北口」が、さらに歩いた先に「丸の内地下中央口」があります。
なお、東改札から丸の内地下北口までは、筆者(30代女性)の足だと徒歩約5分。ただし、丸の内地下北口から在来線や新幹線のホームまでは少し距離があります。そのため、移動時間を見積もる際には必ず「丸の内地下北口から、各ホームへたどりつくまでの時間」を充分加味しておかないと、命取りになりそうな予感大。
東西線からJR東京駅の八重洲口へ行きたい場合はどう進む?
一方、八重洲口に向かう場合には「B6〜B10 JR東京駅八重洲口」と書いてある方へ直進。まっすぐ続く通路をしばらく歩きます。
「B7」から出てもJR東京駅へ行けるのですが、その場合には一旦屋外へ出るかたちになります。
屋外に出ず、JR東京駅まで行きたい場合には、「B7」は通過し、「B8b」に着いたら右折。
曲がるとすぐ、長めの階段とエスカレーターがあります。それを上り、さらに直進すると「東京一番街」に到着。東京一番街の天井には、新幹線やJR全線の乗り口を知らせる看板が設置されているため、その指示のとおりに進むと到着します。
なお、東改札から八重洲口までは、筆者の足だと徒歩約7分でした。こちらもやはり、移動時間を見積もる際には「八重洲口から在来線や新幹線ホームまでの移動時間」を加味しておくのが間違いなさそうです。
東改札以外からの、東西線大手町→JR東京駅へ向かう方法
もし、東改札以外の改札から出てしまった場合は、どうすればよいでしょうか。出た改札から東改札を目指して歩き、そのあと、上記のような流れでJR東京駅へ向かう……というのも手段ですが、ほかのルートもあるとのこと。
そのルートとは、中央東改札から少し歩いた先にある「丸の内オアゾ」の地下1階を抜けていくもの。この場合、「B2b、B2c」の方へ直進します。
丸の内オアゾの地下1階には、「スープストックトーキョー」や「釜揚げうどん 水山」、刀削麺などが食べられる「屏南」などの飲食店が並ぶほか、デリや雑貨も。食事や買い物を楽しみながら歩きたい人におすすめです。
「丸ノ内線」に乗車の場合、東京駅で降りるべし
唯一、東京メトロ東京駅がある丸ノ内線。JR東京駅に用事がある場合には、いわずもがなかもしれませんが、大手町駅ではなく、東京駅で降りるのが最良の判断とのこと。
ですが、もし丸ノ内線大手町駅の改札から出てしまった場合、どうすればよいでしょうか。その場合、まずは東西線がどこにあるかを確認し、東西線の改札を経由し、JR東京駅を目指すのが良さそうです。
丸ノ内線の大手町駅の改札から、東西線の大手町駅へ向かうには「大手町ビル」と「大手町タワー」、2つのビルの屋内を通ります。大手町タワーとは、ホテル「アマン東京」や「みずほ銀行」本店などが入る超高層ビル。東西線へ向かう途中にも、大きく「みずほ銀行」と書かれたATMがあります。
なお、丸ノ内線大手町駅からJR東京駅(丸ノ内地下中央口)まで、筆者の足だと約13分かかりました。歩けなくはないけれど、ちょっと遠いかなぁ……という印象です。
「半蔵門線」大手町駅は、乗り換えを活用するのもアリ
JR東京駅と距離が離れているけれど、丸ノ内線とは近い半蔵門線。そのため、「丸ノ内線に乗り換え、東京駅まで行き、そこからJR東京駅を目指す」という選択肢があるとのこと。
どのくらい近いかというと、半蔵門線ホーム(押上方面、B3階)からB1階へ上ったところに、丸ノ内線のホームがあるという具合です。
なお、半蔵門線からJR東京駅まで歩きたい場合には、先に記載した、丸ノ内線からの場合とほぼ同じコース。まずは東西線の改札へ向かい、そこからJR東京駅へ向かうかたちです。
各線から各線への「大手町乗り換え」でおすすめできないのは?
ちなみに、各線から各線への「大手町乗り換え」には、おすすめできないものもあるようです。
たとえば「JR東京駅に行く」という目的のために、東西線から丸ノ内線へ乗り換えること。なぜならば、東西線の大手町駅からJR東京駅へ向かうほうが、早いためです(途中で迷子にならなければ)。
そのほか「丸ノ内線から東西線に乗り換える際、階段やエスカレーターでの移動が可能なお客さまに対しては、改札外に一旦出て、乗り換えること(改札外乗り換え)をおすすめしています」と田邉さん。
改札内で移動しようとすると、やや大回りになるのだそう。改札外乗り換えの制限時間は「改札を出てから30分」。深刻な迷子にならなければ、各線を移動するのに充分な時間といえそうです。
実は「二重橋駅」からのアクセスが便利な「千代田線」
千代田線の大手町駅とJR東京駅も、けして近いとはいえません。そんななか、おすすめなのが、おとなりの「二重橋駅」とのこと。JR東京駅との間に広い地下通路(行幸地下通路)があるため、雨の日でも濡れません。
二重橋駅からはまず、「JR東京駅方面改札」を出て、7番出口へ直進。
7番出口のすぐ先にあるエスカレーターと階段を上り、その後は右へまっすぐ通路を進みます。3、4分ほど歩いていると、丸ノ内線の改札や商業施設(Echika fit)が見えてきて、その先にJR東京駅の丸の内中央口が登場します。
二重橋駅からJR東京駅丸ノ内中央口まで、筆者の足では徒歩5分くらいでした。
それでも迷子が不安な人へ。覚えておいてほしいこと
ここまで各線からのJR東京駅への行き方をみてきましたが、それでも迷子になってしまった場合、どんな策があるのでしょうか。聞いてみたところ、「外に出てみるのもアリだと思います」と田邉さん。外!
地上に出るという手段もある
その理由は、JR東京駅が「見つけやすい景色」だからとのこと。外観が特徴的だったり、高架が太くて目立つため、JR東京駅の位置を目で確認して、その方向へ進めば到着……という流れです。
たしかに、外へ出てみると、丸の内界隈の道は広く、駅の位置も把握しやすい! 特に、日が差している時間帯に迷った際、おすすめの方法といえそうです。
右にも左にも矢印があった場合は「どちらからも行ける」
さらに、実際に歩いてみて「これは混乱しそう」と感じた表示があったので、その点についても触れておきたいと思います。たとえば、下の写真のようなケース。
その地点から左右どちらから行っても同じくらいの距離の場合、このような現象が起こるといいます。
「迷っている人は、周囲をキョロキョロ見回すことも多いと思います。その際に、矢印の方向が複数あることを見つけてしまうと、なおさら混乱するのかもしれません……」(田邉さん)
この場合、どちらの矢印を選んでもたどりつきます。ただし、どちらかの矢印を選択したあとは、後ろを振り返らずに進むのが良さそうです。
取材を終えて
取材を終えて、「……やっぱり、(大手町駅は)かなり広いですね。1日でここを1周することは、駅員をしていても、なかなかありません。毎日過ごしている自分の職場も、見方を変えてみると色々な景色があるんだと思いました。面白かったです」と話してくれた田邉さん。
逆に筆者は、この体験をとおして、「大手町の構造を難しく考えすぎていたのかもしれない」と思い直しました。じっくり歩いてみて気づいたのです。地下道は必ずどこかにつながっており、行き先を指し示してくれる看板の数も多いことに。複雑な駅だからこその「親切心」をいたるところに感じました。
ただ、大きな駅(大手町)から大きな駅(JR東京駅)への移動なので、迷わずに進めたとしても、どうしても時間がかかるということを、改めて実感した次第です。おそらく、迷うときいちばん辛いのが「時間がない」という要素が加わることなのでしょう。
時間に余裕を持つ! もしかしたら、これこそが大手町駅とうまく付き合うための最重要素なのかもしれません。
※掲載の情報は全て2019年2月時点のものです。