「経営者の覚悟」が新規事業を動かす、ヤモリ×Oracle NetSuiteが語るAI時代に求められる意思決定の極意

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日本オラクルは2026年7月8日、経営者と役員限定のイベントを開催しました。新規事業開発をテーマに、事業化できるかをどう見極め、どのタイミングで投資判断すべきかなどを考察しました。不動産業界の変革に挑戦し続けるヤモリの藤澤正太郎代表取締役をゲストに迎え、同氏が新たな事業機会をどう捉えているのか、どんな根拠に基づき経営判断しているのかも深掘りしました。さらに昨今のAI時代とどう向き合うべきか、経営者としてどんな姿勢であるべきかも議論しました。

目次

課題と向き合う「経営者の覚悟」が異業種からの新規事業創出を切り拓く

既存事業で培った強みをどう活かし、どの領域に踏み出すべきか。その意思決定の裏側には、単純な合理性だけでは測れない経営者としての覚悟が存在する。そこで経営者という同じ立場の人同士が集まる本イベントを通じて、自身の意思決定を後押しする覚悟を育んでほしい――。

イベント冒頭、モデレーターを務めた日本オラクル 執行役員 NetSuite事業統括 日本代表 カントリーマネージャーの渋谷由貴氏は、イベント参加者にこう訴えました。イベントでは「ここでしか聞けない本音」をコンセプトに打ち出し、経営者や役員の参加者が率直に語り合える場を提供。参加者の本音をもとに、経営者としてあるべき姿のヒントを学べるようにしています。

ではイベントではどんな「本音」を聞けるのか。ゲストとして登壇したヤモリ 代表取締役 藤澤正太郎氏は、自身の経歴を振り返りつつ、自分の本音とぶつかりながら新たな道を模索してきた経緯を説明しました。藤澤氏は三菱商事での勤務を経て起業。現在はヤモリの代表として、日本社会が直面する「空き家問題」の解決に乗り出しています。起業に至った経緯について藤澤氏は、「商社時代はインフラや都市開発の新規事業に携わっていたが、自分の責任で意思決定する機会が少ないことに危機感を覚えた。大企業では味わうことのないリスクを背負ってでも、独立して自分の意志で事業を前進させたかった」と本音をさらけ出しました。さらに空き家問題を事業に結び付けたことについて、「事業化するかどうかは、ニーズがあり続けるかどうかに基づき判断している。衣食住の中でも『住む』ことは、人がいる限り不可欠なニーズであるに違いない。このニーズを起点に課題を整理し、解決までのアプローチをどう描けばよいのかを考えて事業化した」と、新規事業創出のヒントを提起しました。

ヤモリが取り組む具体的な事業内容にも言及しました。日本では現在、全国で空き家が急増。2038年には3件に1件が空き家になると予測されるほど、深刻な社会問題に発展しています。この問題について藤澤氏は、物件情報や賃貸需要などのデータの不透明さが問題の本質にあると指摘します。「現在の日本の不動産流通システムは、一部の業者しか多くの情報にアクセスできないクローズドな状態にある。これでは異業種から市場に新規参入するのは障壁が高すぎる」(藤澤氏)といい、ヤモリではこうした業界に根付く課題に着眼し、課題を解消する取り組みを事業として推進しているといいます。

具体的には、自社開発したサービスを使い、2万人を超える個人投資家コミュニティを形成。空き家などの中古不動産をコミュニティ内で流通、活性化させる仕組みを構築しました。「個人のオーナーが中古物件を購入すると、物件データだけではなく融資や賃料などの付随データも蓄積される。ヤモリではこうした各種データを見える化することで、透明性のある中古物件特化のプラットフォームを構築しているのが強みである」(藤澤氏)と述べます。物件情報を取り巻くさまざまなデータを蓄積する仕組みこそが、ヤモリの事業の核心であると藤澤氏は強調しました。

なお、ヤモリのこうした取り組みは、東京都と連携した40億円規模の官民ファンド「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」の組成という大きな成果につながったといいます。「誰もが見捨てていた空き家が、テクノロジーとファイナンスの力によって次世代の資産に生まれ変わった。業界のさまざまな課題を目を向ければ、新規事業創出のヒントになり得る」(藤澤氏)と、疑念や固定観念を振り払って課題と向き合う姿勢が大事だと強調します。モデレーターを務める渋谷氏も、「異業種から空き家問題に踏み込んだ藤澤さんの曇りもない目が新たな事業を築いた好例といえる。これまでの不動産業界の仕組みや慣例にとらわれずに俯瞰し、不動産業界のデータの不備をチャンスに変えようとする姿勢こそが、新規事業の大きなヒントになった」と評価しました。

開発スピードが50倍になるAI時代、経営者に求められるデータ整備の必要性

イベントでは、今注目の「AI」が事業にもたらす影響についても両氏が議論しました。藤澤氏はAIの活用によってソフトウェアやサービスの開発効率が劇的に向上したことに言及します。「ヤモリを創業した7年前を1とすると、現在のサービス開発スピードは50くらいになっている。以前なら半年はかかると思われていたマイルストーンに、わずか2週間で到達してしまう」と、飛躍的なスピードアップを実感しているといいます。この驚異的なスピード感は、開発がボトルネックになるのではなく、むしろ経営側の思考スピードこそがボトルネックになる時代に突入したことを物語っていると、イベントに参加する経営者に訴えました。「サービスやソフトウェアなどのプロダクトは次々に完成する時代へ突入した。こうした時代では、経営者がいかに早く、かつ的確に意思決定を下せるかがビジネスの成否を分ける」(藤澤氏)と述べ、何を拠り所に意思決定するのかを考え、決めておくことがこれからの経営者に欠かせないと指摘しました。

一方の渋谷氏は、AIがもたらす価値について言及。その源泉はあくまで「データ」にあると強調しました。「AIが導き出した答えの基ととなるデータが汚れていれば、経営者は誤った意思決定を下しかねない。例えば、部署間で在庫の定義を間違えたまま運用し続けていたら、部署ごとに導き出される適正在庫数や生産数、調達部品数は必ずしも適正ではなくなる。生産過多や部品の欠品を招き、売上減少や機会損失さえ起こしかねない。こうしたリスクを回避するためにも、データの不整合を解消する取り組みの重要性が増している。地味な取り組みだが、データをきれいに保持する取り組みが、AIによってもたらされる価値を最大化する」(渋谷氏)と訴えます。さらに渋谷氏は、データの民主化の必要性にも言及します。「データに基づき判断するのは経営層だけに限らない。現場の従業員にも経営層と同じ解像度のデータを共有し、各従業員が意思決定できるようにしなければならない。こうした環境を整備することがAI時代のスピードに追随する唯一の道に他ならない」(渋谷氏)と続けました。

藤澤氏も渋谷氏の指摘に同意するとともに、データ入力の手間を増やさないでほしいという現場の声に経営者はきちんと答えることが重要だと指摘します。「現場の中には、忙しいからデータ入力の手間を増やさないでほしいという反発が必ず起こる。しかし、私は現場に対し、『もっと大きな景色、ビジョンを見よう』と粘り強く呼びかけている。AIがビジネスの根底を支える土台となる中、データが自社のアセットになるか負債になるかは自社の成長を大きく左右しかねない。1件のデータを確実に入力する地道な現場の取り組みが、将来の競争力の源泉となることを現場に理解させるべきである」(藤澤氏)と述べました。なおヤモリでは、現場の負担を最小限に抑えつつデータが自然に蓄積される仕組みを追求。テクノロジーを単なるツールとして使うのではなく、組織の文化を醸成させる仕組みとして位置づけるようにしているといいます。

「北極星」となるビジョンを掲げ、失敗を恐れない圧倒的スピードで新規事業に挑む

イベント後半には、「経営判断の軸」というテーマで経営者としてあるべき姿も問いました。藤澤氏は、リソースの少ないスタートアップ企業に限定し、迷走しないために経営者が心掛けることに触れました。「事業の方向性を見失わないためには、会社のあるべき姿を言語化したビジョン、つまり北極星の存在こそ重要である。ヤモリの場合、私は短期的な利益を追求するのではなく、『不動産の民主化』という本来やりたかったことに合致しているかを常に自問して判断している。ヤモリの存在意義に立ち返ることで、従業員を含む全員が同じ方向を向いて走り続けることができる。どんな状況でもブレないビジョンを従業員と共有することが経営者には求められる」(藤澤氏)と述べました。

一方、経営者の中には個人の感情に流されるケースも少なくないといいます。こうした状況を放置すると、会社全体の方向性を統一できなくなる恐れがあります。そこで藤澤氏は、重要な局面であるほど経営陣が徹底的に議論し、客観的なプロセスで方向付けすべきと訴えます。「経営者が思い描くインスピレーションをあえて他者の目にさらすようにすることが必要だ。この機会が、『本当に会社のための判断なのか』と自問する契機になる。個人としての感情なのかどうかを峻別する機会は、経営者として絶対的な判断軸を作り出す上で重要な取り組みとなる」(藤澤氏)と、経営者こそ自省する機会を設けるべきと参加者に促しました。さらに、思いついたらその日のうちに一歩を踏み出す圧倒的なスピード感も養うべきと続けました。

渋谷氏も、経営者が持つべき経営判断の軸として、「スピード感を養うべき」と強調します。「失敗を恐れ、検証に2年もかけるような文化こそ最大のリスクと自覚すべきである。これは多くの日本企業が抱える共通の課題だ。たとえ現在の事業が好調でも、失敗を恐れて挑戦しなければ、世界から取り残されていることになる。こうした状況に危機感を持ち、経営者は従業員の挑戦を許容する文化を社内に根付かせることが大切である」(渋谷氏)と述べ、藤澤氏がヤモリで実践するスピード感こそ、今の日本企業に求められるスタンダードだとイベント参加者に呼びかけました。最後にイベントを統括し、経営者が果たすべき役割について改めて言及しました。「テクノロジーがいかに進歩しようとも、AI全盛の時代が到来しようとも、経営判断を最後に下すのは経営者の覚悟である。未知の新規事業に乗り出すかどうか、異業種から新規市場に参入するかどうかもすべて、経営者の覚悟があって初めて一歩を踏み出せる。自分だけの判断軸を養い、確固たる覚悟を持って新規事業に挑戦してほしい。日本オラクルは、これからもテクノロジーの力を通して経営者の覚悟と決断を支える役割に徹していく」とまとめました。

登壇者プロフィール

⚫︎第1回ゲスト
藤澤 正太郎 (ふじさわ しょうたろう)
ヤモリ株式会社 代表取締役

2011年に三菱商事株式会社に入社。インフラ事業の海外案件とアセットマネジメントに従事。南米チリに4年間駐在。その後、NY本社の不動産ユニコーン企業であるKnotel IncのJapan GMを務める。東京大学のスタートアップ支援プログラムFoundXと東大IPC 1st Roundに採択。

ヤモリ株式会社
「不動産の民主化」をミッションに掲げ2018年創業。空き家・中古不動産の再生に取り組む不動産テック企業。不動産オーナー向け経営管理システム「大家のヤモリ」などを展開し、東京都との官民連携ファンド組成なども手がける。


⚫︎ナビゲーター
渋谷 由貴 (しぶや ゆき)
日本オラクル株式会社 執行役員

NetSuite事業統括 日本代表 カントリーマネージャー

総合商社・外資系IT企業にて営業、マーケティング、事業開発、セールスマネジメントを幅広く経験。データ・クラウド領域ではAPJ統括として経営に参画し、事業成長とIPOをリード。直近では大手クラウド企業においてエンタープライズ営業を統括。2023年7月より現職。

Oracle NetSuite
1998年に誕生した世界初のクラウドERP。財務会計・在庫管理・CRMなど基幹業務を単一システムに統合し、世界44,000社以上で導入。多通貨・多言語対応でグローバル経営の可視化とスピーディーな意思決定を支援する。


なお、今回開催した経営者・役員限定イベントは、今後も開催を予定しています。「経営者としての覚悟を身に付けたい」、「他の経営者や役員の姿勢を学びたい」、「経営に携わるイベント登壇者の講演を参考に、自社の経営を見直したい」などと考えている経営者や役員に役立つテーマで開催する予定です。開催間近になったら、Oracle NetSuiteの公式サイトなどで告知しますので、気になる人はぜひチェックしてください。

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