世界を元気にする日本人の誇りを持つ熱き挑戦者たちリレー対談 日本の将来はあなたによって創られる! <第17回> マイノリティ・アーティストが結集した唯一無二のコメディ・サスペンス映画、ついに上映!

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公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏が、世界を元気にする挑戦者たちと日本の将来について語り合うリレー対談。第17回目は、一般社団法人Get in touch理事長として映画「まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり~」を企画した俳優の東ちづるさんをお迎えしました。

目次

デビュー当時、芸能界はスタッフが全員男性の世界だった

喜多村:本日は、お馴染みの東ちづるさんをお迎えしました。現在は、さまざまなマイノリティパフォーマーたちによる舞台「まぜこぜ一座」の企画プロデュースや、映画「まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり~」を制作し、話題を巻き起こしています。まず、ご経歴もお伺いしたいのですが、東さんは、もともと会社勤めをされてたんですって?

:そうです、企業の会社員でした。もともとスキーやテニス、ウィンドサーフィンをやっていまして、季節労働者といいますか、そのインストラクターになりたくて会社を辞めたのですが、雪が降るまでの間、タレントオーディションを見に行ったら声をかけられて。

喜多村:そこでスカウトされたわけですね。

:そんなカッコいいものじゃないですが、トークをしてみせたら面白い子だということで、すぐにリポーターの話がありました。24〜25歳の頃です。そこからすぐ現場に入る日々で寝る間もないくらい忙しくなって。

喜多村:すごいですね。下積みもなく、すぐにチャンスを掴んだんですね。

:会社員時代は企画進行や映像を編集する仕事をしてたんですよ。なので、テレビに必要なことや、そこをいかに面白くしていくか、ウラ側をわかっていたので使いやすかったんだと思います。ただ、当時の芸能界って、本当に男尊女卑の時代で、それが一番びっくりしました。ディレクターもカメラマンもプロデューサーも全員男性だし、ラブシーンだろうが入浴シーンだろうが、全員男性に囲まれて撮るんですよ。

当然、番組作りも男性目線で、女性の視聴者が見る番組も「女性はこういうのお好きでしょう」って感じの企画。私たち女性は、これよりもこっちのほうがいいんだけどなと思いつつも、立場的には全然言えない。

喜多村:本来見てもらいたい人たちの感情がちゃんと描かれていなかった。

:そうです。時代とともに徐々に女性が入ってくるようになって、今は女性スタッフもたくさんいますけどね。その当時、大阪で司会やリポーターをしてたのですが、大阪で全国ネットの番組が作られるとなると、東京からタレントさんをを呼ぶんですよね。頑張ろうと思っても私にはチャンスが回ってこない。それで事務所に「東京行きたいです」と伝えたんですが、当時は「東京に男がいるのか?」なんて言われましたよ。

喜多村:今じゃその発言はNGですよね。大阪と東京の番組作りは、やはり違いますか?

:制作費もノリも全然違っていました。台本も東京だとキッチリ書き込んでいますが、大阪では「笑い取ってよろしく」みたいな(笑)。でも、そうしたアドリブは大阪で鍛えられましたね。とくに金子信雄さんとの料理番組『金子信雄の楽しい夕食』は台本がありませんでしたから。

白血病の少年との出会いから、社会の理不尽さに直面

喜多村:その後、数多くのドラマや映画で活躍することになる東さんですが、一方で30年以上もボランティア活動をなさっています。きっかけはどのようなことだったんですか?

:私はデビューが報道・情報番組だったんですね。その時に会った尊敬するディレクターが「報道と政治は困った人のためにある。番組は困っている人に届くように作るんだ」と教えてくれたんです。その言葉が私にはものすごく響いたんですよね。

32歳のとき、17歳の白血病の少年を追ったドキュメンタリーを見たのですが、その作り方が涙を誘うものだったんです。そうした演出も大事なことではあるのですが、彼のメッセージが伝わっておらず、とても気になってしまって。で、その彼を探して何を伝えたかったのかを聞いたんです。

喜多村:東さんが個人的に探して、本当のところを聞いたということですか。

:ええ、そうしたら、その年は骨髄バンクができた年で、それを知ってもらうために彼は取材に応じんだと。でも、番組の中でその紹介はなかった。それを果たすのはメディアの責務だろう、何もしないわけにはいかないと思い、私はカメラマンやスタイリストさん、照明さんなどと一緒にお金を出し合って、骨髄バンクを周知させるためのポスターを作ったんです。ところが、今度はそれを貼ってくれるところがない。

喜多村:えっ、どうしてですか?

:それが「アイバンクもあれば臓器提供もある。骨髄バンクだけを特別扱いするのは難しい」とのことでした。病院も学校も行政もダメだった。じゃあ、ポスターを貼ってくれるところを募る活動をしようって、講演会やシンポジウムを立ち上げたんです。

喜多村:それは本当にすごいことですよ、俳優さんや司会のお仕事がある中で。東さんにとってライフワークのようなものなんでしょうか。

:無我夢中で当初はそんなこと思っていませんでした。啓発活動で出会う患者さんが増え、そして出会った方がどんどん亡くなっていく。患者さんやご家族との繋がりがどんどんできていく中で、もうやるしかないという思いでした。

骨髄バンクは92年に始まって以来、登録者もたくさん増えましたが、登録できるのは55歳までで、少子化にどう対応するかの課題もあります。また、白血病で親を亡くした子どもたちが就学を諦めたり貧困になったり、移植後の二次がんの問題もあったり、ひとつのことに取り組むと「こんなにも社会は理不尽なのか」と思うことが次から次へと出てきます。

喜多村:そうして活動が広がる中、東日本大震災の後にはGet in touchという一般社団法人を立ち上げられましたよね。私も絵本のプロデュースをしていたときにご縁を頂きましたが、これはマイノリティの方々とアートやエンターテインメントをやっていこうという活動なんですね?

:3.11のような社会が不安に陥っているときというのは、難病患者や障害のある方など普段から生きづらさを抱えているマイノリティが、より追い詰められてしまうという現実があるんですよね。そうした現実を見たとき、どんな状況でも誰も排除しない、されない社会で暮らしたいと思ったんです。

私は芸能界にいてエンタメの作り方もわかっているし、いろいろな企業やこれまでの講演やシンポジウムに集まって下さる方々ともつながって、アートや音楽、舞台、映像といったワクワクすることで人を集め、人間関係を紡いでいったほうがいい。それによって、点と点を面にすることはできるんじゃないか。「ちがい」を超えた「まぜこぜの社会」を目指せるんじゃないかと思い、Get in touchを立ち上げました。そこから2017年に「まぜこぜ一座」を旗揚げし、今はエンタメでの啓発活動をしています。

自分が試される? 新感覚のエンターテインメント映画が完成

喜多村:6月に渋谷で開催された「まぜこぜ一座」のパフォーマンスイベントと映画上映、リアルに拝見したのですが、義足のダンサーさんや目の見えないシンガーの方、ドラァグクイーンの方、ダウン症のダンサーさんも踊っていて、それが皆さんすごいんですよね。既成概念を覆されるといいますか。「歌姫の登場です」というから見てみたら「ええっ?」みたいな。

:歌姫って言われたら、みんな若い美しい女性だと思っちゃうんですよね。それが出てきたら車椅子の昭和のオジサマ?みたいなね(笑)。でも歌はすごいっていう。

喜多村:素晴らしい歌でした。皆さんその道を極めてらっしゃるんですね。

:「まぜこぜ一座」の人たちというのは、障害という特性があって、プロのパフォーマーでありプロのミュージシャンであり、プロの役者さんなんですよね。突出して素晴らしい才能があり、プラスすごい努力をしている。ただ、今のエンターテイメント業界には、障害のない人たちと同じようなチャンスがない。

テレビに出たとしても1年に数回、教育番組や福祉番組ですよね。それも大切なんですが、歌番組やバラエティ、ドラマにフラットに出られる方が健全なはずです。それを芸能界で示すことができれば社会にも大きな影響を与えられると思っています。

喜多村:それで「まぜこぜ一座」を立ち上げられた。

:欧米ではダウン症の人だけのプロダクションもありますし、こびとさんたちがいなかったらスター・ウォーズもハリー・ポッターも成立しない。ハリウッドになくてはならない役者さんたちです。

喜多村:昔は日本でも「てなもんや三度笠」がありましたけどね。

:白木みのるさん!最高でしたよね。

喜多村:ふつうにテレビに出ていましたし、僕らも子どもながらに障害者だとは思っていなくて「背が小さい面白い役者さん」だと。いつからそういう文化がなくなっちゃったんですかね、日本では。

:障害者を働かせるのはいかがなものか、障害者を笑い者にするのはいかがなものかというクレームもあって、結果的に彼らの職場を奪っていったという話があります。それで「こびとプロレス」も放送がなくなったり。ところで、映画の「まぜこぜ一座殺人事件」はいかがでしたか?

喜多村:いやあ、面白かったですよ。「まぜこぜ一座殺人事件」10月18日から一般上映ですので、あまりネタバレになることは言えませんけど、まず、東さん死んじゃうじゃないですか。「本当は死んでないんじゃないか」とか「誰が犯人なのか」とかミステリー的な展開にのめりこみつつも、ハッとさせられたり、考えさせられたり、最後は「ええっ!そうなる?」っていう。

:私、説教臭い映画が苦手なんです。

喜多村:誰もが楽しめる映画で90分あっという間でした。あの芋洗坂係長と、石井正則さん、山野海さんの3人は世間の側なんですよね。見ているうちに「あれ?自分もこっち側の人間なんじゃないか?」と思わされる。最後は「なにか自分もしなきゃ」と思わされるような。自分を試されるような不思議な作りの映画でした。周りの人には「絶対見るべきだ」と勧めてますよ。

:シナリオライターのエスムラルダさんと半年かけて練った甲斐あって、ホントに面白い話を書いてくれたんです。齊藤雄基監督と技術スタッフも普段はCMがメインの仕事をしているので、テンポもいいですし、映像もとても綺麗なんです。

喜多村:映像、良かったですね。それとエンディングの曲もバズってるそうですね。この活動に共感する声優さんたちが歌っているという。

:めちゃめちゃバズってます。三ツ矢雄二さん、山寺宏一さん、日髙のり子さんら、レジェンド声優11人が揃ってのミュージックビデオですから。エンドロールが終わるまで立たせないことを目標に作りました。個人的にはお子さんたちにもぜひ見てほしい。子どもたちは偏見がないので、純粋に笑って楽しんでくれると思っています。

今回は、アプリによる音声ガイドとバリアフリー字幕も付いた上映になります。それと、映画館で毎回障害者手帳を見せるのが煩わしいという方もいるので、料金設定も工夫します。お子さまも、シニアも、障害のある人もない人も、鑑賞料は一律1000円、プラス500円の読み応えあるパンフレットを付けて、トータル1500円設定に挑戦します(一部の劇場を除く)。まぜこぜのお客さま、皆んな同じ料金です!

喜多村:これからの展開が楽しみですね。最後に本対談シリーズのテーマとして皆さんにお聞きしているのですが、今の世の中で、東さんが思う「求められる人財」とは、どんな人でしょうか?

:自分の思いや希望を言語化できる人、表現できる人。それは言葉でも筆談でも手話でもいい。私たちは、子供のころからその訓練をしてきていないので、社会人になってから「個性を発揮しろ」「アイデアを出せ」と言われてもすぐにはできないんですよね。

学校でも「みんなと一緒に」と教わって、浮かないように過ごしてしまうのですが、間違ってもいいし整理できていなくてもいいから、失敗を恐れず「自分はこう思っている」とどんどん言える土壌がないとダメ。当然、そうしたウェルカムな環境を作ってくれる人も必要ですよね。


◆東ちづる(あずま ちづる)
広島県生まれ。会社員生活を経て芸能界入りし、ドラマや映画、情報番組の司会、コメンテーター、講演、出版など幅広い分野で活躍。2012年、アートや音楽、映像、舞台などのエンタメ通じて、誰も排除しない「まぜこぜの社会」をめざす、一般社団法人Get in touchを設立。東京2020オリパラの公式文化プログラム「MAZEKOZEアイランドツアー」では企画・構成・キャスティング・衣装デザイン・演出・総指揮を務めた。近著に、自ら描いた妖怪61体を社会風刺豊かに解説した「妖怪魔混(まぜまぜ)大百科」(ゴマブックス)。

【イベント情報】
映画「まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり~」
劇場公開日:2024年10月18日より
上映館:ヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森ほか順次全国公開
監督:齊藤雄基
出演:東ちづる、大橋弘枝、ダンプ松本、ドリアン・ロロブリジーダ、桂福点 、野澤健、マメ山田、三ツ矢雄二、峰尾紗季、森田かずよ、矢野デイビット、悠以、石井正則、芋洗坂係長、山野海
公式サイト:https://mazekoze-matsuri.com/

◆喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 前評議員理事・前校友会副会長
公益財団法人音楽鑑賞振興財団評議員
元法政大学大学院客員教員

一般社団法人 公開経営指導協会
所在地:東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
URL: https://www.jcinet.or.jp/

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