お酒をグラスにこだわって楽しむ人が多くなっています。なかでも、ワインはグラスによって大きく味わいが変わることが実証されているお酒。世界で初めてブドウ品種ごとに理想的な形状を開発したリーデル(オーストリア)の銀座店で、初心者でも失敗しないワイングラスの選び方について聞きました。
まず、どんなワインタイプが好きか知ることが肝要
近年、ビールや日本酒をワイングラスで楽しむ人が増え、それを推奨するお酒のメーカーも多く見受けられます。これは、「香り」が味わいの決め手として比重を置く商品が増えるなかで、ワイングラスがその特徴を活かす形状であることが大きいと思われます。
ワインは、グラスのボウルの形で味わいが変わるというのは広く知られるところ。ワイングラスメーカーとして世界的に知られるリーデル(オーストリア)では、ワインのブドウ品種ごとにボウルの形や大きさが異なるグラスを製造しています。
グラスの形状によって、お酒の味の感じ方が異なることを世界で初めて唱えたのは、同社9代目のクラウス・リーデル氏でした。同氏はその持論からワインのタイプに基づいて形状を違えたグラスを販売すると、多くのワイン愛好者、飲食店から支持され、瞬く間にグローバルカンパニーへと成長を遂げました。
グラスの開発は、リーデルが独自の基準で行うのではなく、ワークショップ(テイスティング)を開催して世界中のワイン生産者たちに試してもらい、皆の意見をもとに最適な形を探し当てます。それがリーデル人気の基盤となっているものです。
しかし、ワイングラスの購入に訪れた際に、形ではなくワインタイプによって選ぶというのは、ワイン初心者やあまり知識のない人たちにとってはハードルが高いように思えます。
そこで、2018年4月にオープンしたリーデル銀座店を訪れ、ショップマネージャーでソムリエでもある大久保真衣さんに失敗しないグラスの選び方を教えてもらいました。
どんなワインでも美味しく飲めるグラスを選ぶのが経済的かつ実用的に思えますが、「それは洋服で例えるなら、フリーサイズを選ぶようなものです」と大久保さんは話します。確かに、フリーサイズよりもその人にぴったり合う服を選んだ方が、体型や個性が引き立ちます。ワインにもそれぞれ個性があるので、その個性や長所を際立たせるものを選ぶことで、より美味しく楽しめるというのは納得がいきます。
そのためのグラス選びの第1歩として、大久保さんは「まずは、自分がどんなタイプのワインが好きかを知ることが肝要です」といいます。
リーデル銀座店へ行くと、ディスプレイされたワイングラスの後ろにブドウのマークが色分けされて付いていることに気がつくことでしょう。
これは、ワインのタイプを7種類に大別して、そのグラスがどのワインタイプに合うものかを示したものです。この分類について、銀座店ではグラス棚の上に説明書きがあります。
この説明書きからだけでは、ワイン初心者はどのブドウ品種のことをいっているのかわかりづらいかもしれません。該当する代表的なブドウ品種をみていきます。
グラスの候補を決めたら、味わいや飲み心地を試す
大久保さん曰く、「華やかな香りと豊かな酸味のフレッシュな白」の代表格はリースリングが該当。「豊かな香りとまろやかな味わい 熟成感のある白」は樽熟成したシャルドネ。「魅惑的な香りと鮮やかなルビーレッド 酸味豊かな赤」はピノ・ノワール。
「赤みを含んだパープルルージュ 程よい渋みと酸の赤」はシラー。「黒紫を含んだガーネット 渋みが強く酸味が穏やかな赤」はカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなど、フルボディ(重厚感がある)系です。
リーデルのグラスは、同じブドウ品種でも「ニューワールド ピノ・ノワール」「オールドワールド ピノ・ノワール」といった風に、生産地で形状を違えているものが多くみられます。リーデルのいうオールドワールドはヨーロッパのワイン生産地、ニューワールドはそれ以外の国々のワイン生産地としています。
グラスの名前は、「カベルネ/メルロー」など適合するブドウ品種の代表的なものになっているので、気に入ったグラスの名前を見ればどのブドウ品種に合うものかわかります。また、飾られたグラスのブドウマークの下に適合する品種が列挙されているので、それを参考にグラスを選ぶこともできます。
銀座店には、画面上でブドウ品種を選ぶとどのワイングラスが適しているかを教えてくれる、タッチパネルもあります。マイナーなブドウ品種に合うワイングラスを知りたい時や、ディスプレイにないグラスを選ぶ時に重宝します。
リーデルでは同じブドウ品種でも複数タイプのグラスがあり、また、ハンドメイドとマシーンメイドがあることから、選択に迷うこともあるかと思います。失敗しないグラス選びの2番目のポイントとなるのが、テイスティングです。
都内のリーデル販売店でテイスティングができるのは、路面店の青山本店と銀座店のみ。テイスティングの金額はワインによって異なり、1杯1080円からです。1杯分で2脚まで試すことが可能です。
試飲用ワインはあらかじめ決まっていますが、銀座店にはワイン販売のコーナーがあり、自分のお気に入りのワインやよく飲む地域のブドウ品種のワインがあれば、それを購入して迷っているグラスで試飲することもできます。
飲み慣れたブドウ品種やワインで試飲するのは、銀座店のみです。代表的な品種以外のもので試せる上、味わいの違いもわかりやすく、他の品種用に作られたグラスを試してみると、より納得できることでしょう。購入したワインを店内で飲むのは、グラス購入のための試飲用のみです。
お酒の販売店では、ワインは国別に置かれていることが多いですが、銀座店ではワインタイプ別に置かれています。
なるべく多くのブドウ品種をカバーしてくれるグラスはある?
ブドウ品種について知識がなく、グラス選びに迷う人も多いと思います。その場合は、気軽にワインの品種とグラスについて学べるリーデルの「グラステイスティング・セミナー」がオススメです。これも失敗しないグラス選びに役立つものです。
セミナーでは、グラスによる味わいの違いを体験できる上に、代表的なブドウ品種、香りの楽しみ方、注ぐ時の注意点、グラスの手入れの仕方などを教えてもらえます。知識がある人も楽しめる内容です。
ベーシック・コースが所要1時間で5400円。代表的なブドウ品種のワイン4種類を使用し、それそれに適合したグラスと適合しないグラスで味わいの違いを確かめます。使用したグラスのうち、気に入った1脚を持ち帰りでき、グラスの価格が4860円なので、実質の授業料は500円程度。そのほかに、レッド・ワイン・コース 5940円、シャンパーニュ・コース 5400円の計3コースがあります。
また、銀座店では「フードペアリング・エクスペリエンス」という、同じフードとワインでも、グラスによって味わいが変わるというマッチングを試せるコースもあります。
このように、リーデルではさまざまな飲み比べを実施していて、グラスで味わいが変わることへの確固たる自信を感じられます。
そうは言っても、料理に合わせて多種多様にワインを選ぶことが多い、品種ごとにグラスを揃える余裕がないなどの理由で、より多くの品種をカバーしてくれるワイングラスを選びたいという人もいることでしょう。
これに適するグラスのチョイスを大久保さんにお願いすると、「VERITAS」シリーズのリースリング/ジンファンデル用を推薦。
「ブドウ品種ごとにグラスを変える味わいには及びませんが、汎用性を第一とするのであればこちらが白ワインに加えて、ボジョレー・ヌーボーやピノ・ノワールのような軽やかな赤やロゼまで美味しく味わうことができます」(大久保さん)
同グラスは日本酒の大吟醸用のグラスにも形状が近いとのこと。これに、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローのような重厚感のある赤用のグラスを揃えれば、赤白多くのワインをカバーできる(スパークリングと酒精強化ワイン除く)そうです。手始めに汎用性のあるグラスを使用し、さらに味わいを深めたくなったときに次なるステップへと進んで行くのも良いでしょう。
前述したハンドメイドとマシーンメイドですが、ハンドメイドは職人の手作りで、ボウル部分の厚みがマシーンメイドより薄くその分軽量で、繊細さが感じられるグラスです。ハンドメイドは1万円以上するので、普段使いにはマシーンメイドを購入し、いいワインを開けるときなど特別なシーンや贈り物にハンドメイドを購入する人が多いとのこと。
失敗しないワイングラス選びは、まず自分の好みのワインタイプを確かめ、それをもとにグラスを探して複数のグラスで飲み比べる。好みのブドウ品種がわからなければ、常駐するソムリエに相談したり、セミナーに参加したりすることもその方法のひとつ。銀座店は、好みのワインを購入して試したり、フードとの相性も試せるので、より確実に自分の好みに合ったグラスを選べるのではないでしょうか。
【リーデル銀座店】
東京都中央区銀座6-2-1 Daiwa銀座ビル 1F
平日 12時〜21時、土曜 11時〜20時、日祝 11時〜18時
・月曜定休日(祝日の場合は営業)
各線「銀座駅」C2出口から徒歩5分、有楽町線「有楽町駅」D8出口から徒歩10分、JR「有楽町駅」から徒歩約6分
※表示価格は税込です。掲載の情報は全て2019年3月時点のものです。