アサヒ飲料が仕掛ける、新しい資源循環モデル「CO2を食べる自販機ってどういうこと?

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全国に約400万台あるとされる自動販売機。この猛暑の夏にお世話になった人も多いのでは? そんな身近なオアシスも、環境に配慮した新しい機種が続々投入されているのをご存知でしょうか?

「CO2を排出しない」ではなく「CO2を食べる」自動販売機が登場!

 街中で必ず目にする自動販売機は、24時間飲み物を手軽に買える便利な存在。全国で約200万台もの数が設置されていると言われますが、エコロジーや地球温暖化への関心が高まっている昨今、その消費電力がどの程度なのか、気になった方もいるかもしれません。

 実のところ、飲料メーカーのエコロジカルな取り組みは先進的で、現代の自動販売機1台あたりの消費電力は500〜1,000kWh程度。電気代に換算すると年間2万円弱で、15年前と比べるとおよそ3分の1に減少しています。

 これは各飲料メーカーがいち早く環境に配慮した自動販売機を投入してきたためで、例えば、オゾン層を破壊するフロンや温室効果ガスの原因となる代替フロンをやめ、ノンフロン冷媒を使用する機器に切り替え、省エネ機能を搭載した新機種を開発してきた成果と言えるでしょう。

 現在では、蛍光灯と比較して消費電力を7割削減できるLED照明や、冷却時に発生する熱を捨てずに再利用してホット商品を温める「ヒートポンプ機能」、売れる商品を内蔵マイコンが判別して部分冷却・加温する「学習省エネ機能」などが次々自動販売機に搭載。さらには稼働に必要な電力をグリーン電力に置き換えてCO2排出量を実質ゼロとする「カーボンオフセット自販機」も登場しています。

 そうした中、注目されているのが、「都会に森を作る」という、「カーボンオフセット自販機」とは全く違う、新しい発想からアサヒ飲料が開発した「CO2を食べる自販機」です。

 この「CO2を食べる自販機」のユニークな点は、機器の消費電力量を抑えるのではなく、自動販売機の内部に大気中の特殊な吸着材を設置することで、文字通りCO2を吸収してしまうところ。

 街の自動販売機そのものが、植樹された木と同じようにCO2を吸収し、吸収したCO2を再利用して新たな資源循環を生み出す。そんな未来を見据えた自販機が「CO2を食べる自販機」なのです。

100年愛されてきたブランドを抱えているからこそ、次の100年を考える

 実はアサヒ飲料、1884年発売の「三ツ矢サイダー」、1904年発売の「ウィルキンソン」、そして1919年生まれの「カルピス」と、100年以上続く飲料ブランドを3つも有していることから、未来へ向けても「新しい価値=ギフト」を届けたいという願いを込めて「100 YEARS GIFT」を企業テーマに掲げています。

 こと環境分野においては、ラベルをなくした「ラベルレスボトル」や、ラベル面積を最小化した「シンプル eco ラベル」を業界で初めて発売。PETボトルをリサイクルして同じPETボトルを生み出す「ボトル to ボトル」にも注力し、現代表取締役社長の米女太一氏を筆頭に、well-beingな次の100年に向けた取り組みを行っています。

「CO2を食べる自販機」もまた、そうした「100 YEARS GIFT」の一環として2023年に実証実験がスタートしました。

「CO2を食べる自販機」の構造は、驚くほどシンプルです。
 元来、自動販売機は、周りの大気を吸い込み、それを利用して商品を冷やしたり温めたりする機械。その機能を活用し、今まで通りの自販機の通気口の内側に、CO2吸収材を入れたボックスを設置しただけの仕組みで、何か特殊な機能を開発したわけではありません。

 その設置した吸収材を、商品補充のタイミングに合わせて2週間に1度ほど交換・回収するだけなので、人手も増やすことなく、これまでのオペレーションの中で継続できるというわけです。

 そうしたシンプルな仕組みでありながら、1台の「CO2を食べる自販機」が吸収できるCO2の量は、樹齢56〜60年のスギの木で換算すると、実に年間で最大約20本分にも相当。稼働電力由来のCO2排出量の最大20%を見込んでいます。

回収したCO2は工業原料や建材、ブルーカーボン生態系再生にも活用

 では、回収したCO2はどのように循環・活用されるのでしょうか。
 
 まず考えられるのは、コンクリートやアスファルトの原料に配合すること。
 アスファルトは多くの舗装道路に用いられていますが、製造時にCO2が排出されます。天然資源の代わりに「CO2を食べる自販機」でCO2を吸収した吸収材を使えば、その排出量を最大で約10パーセント削減することが可能です。

 実際、アサヒ飲料では、道路整備事業を手掛ける前田道路株式会社とともに、回収したCO2を活用した道路用材料を共同開発。アサヒ飲料研究所内の道路や茨城県土浦市の一般道で実証実験を行っています。
 
 さらに、京王電鉄では「CO2を食べる自販機」から回収したCO2吸収材をケーブルトラフのコンクリートに配合。従来のケーブルトラフ製造時のCO2排出量を9.2パーセント削減することに成功しました。
 西松建設でもCO2を吸収した吸収材をコンクリートに練り混ぜることで、CO2排出量がマイナスとなる「カーボンネガティブ」なコンクリートの製造を実現。現在、実用化に向け、耐久性などの試験を重ねています。

 また、沖縄県伊良部島では伊良部島環境協会協力のもと、CO2吸収材入りコンクリートを活用したサンゴ移植の実証実験をスタート。吸収材を配合したコンクリートの方が白化を抑制する傾向を確認しています。今後、詳細メカニズム検証を経て、更なる海洋環境の保全に繋げることを目指しています
 
「CO2を食べる自販機」は、大阪府のカーボンニュートラル技術開発・実証事業に採択されたことから、当初、府内数カ所に設置され、現在はOsaka Metro御堂筋線梅田駅や北大阪急行電鉄・千里中央駅や箕面萱野駅、東京スカイツリータウン内など、2025年8月末時点で3000台以上が稼働。開催中の大阪万博会場でも約50台が運用されています。

 アサヒ飲料の目標は「CO2を食べる自販機」を2030年に5万台へ増やすこと。1台だけでは小さな取り組みですが、都市の森のように「CO2を食べる自販機」が増え、企業や自治体との協業によってCO2の再利用先が拡大すれば、地球温暖化対策の世界共通目標であるカーボンニュートラルの実現もグッと現実味を帯びてくるに違いありません。


◆アサヒグループジャパン「CO2を食べる自販機」特設サイト
https://www.asahigroup-japan.co.jp/expo2025/vending/co2/

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