【日本を元気にする企業経営者リレー対談 日本の将来は人財によってつくられる!】 小売業を元気にするカギは、笑顔の付加価値と接客販売の地位向上

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公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏が、さまざまな分野の経営者と日本を元気にするための英智を語り合うリレー対談。第2回は、質の高い人財マネジメントによって百貨店や有名スーパーなどの店舗運営を担う株式会社チェッカーサポートの代表取締役、伏見啓史さんをお迎えしました。

目次

日本が誇る「接客」は、いま最もトレンディな業務

左が喜多村豊さん。右が伏見啓史さん

喜多村: 今回はスーパーマーケットや百貨店、空港などのレジという、私たちにとって身近な場所での業務のアウトソーシングを委託し、接客スタッフを育成しているチェッカーサポートの伏見代表にお越しいただきました。チェッカーサポートさんの接客スタッフは何名くらいいらっしゃるのですか?

伏見:トータルで5000人を超えたところです。なかなか気付かれる方は少ないのですが、みなさんが買い物に行った際、レジを担当しているのはお店の従業員ではなく弊社のスタッフかもしれません。名札には弊社の名前やロゴがあったりしますが、制服は同じものを着ていますし、知る人ぞ知る会社ではあると思います。

喜多村:私たちが知らないだけで、実はチェッカーサポートさんのスタッフから買い物をしていると。

伏見:そうですね、創業期は百貨店、スーパー、ホームセンターというところが多かったのですが、今は空港の需要がすごく増えています。テナントとして空港に入っている企業さんから受託する場合もありますが、各空港さんにリテール部門がありますので、おもにエアポートショップを営むグループ会社さんからお仕事をいただく形ですね。羽田、成田、関西、セントレア、那覇など、主要空港にはほとんど弊社のスタッフが入っています。

喜多村:そうした世の中の下支えをしている人財をマネジメントされている中で「笑顔で日本を元気にする」というミッションを掲げてらっしゃいますね。

伏見:ええ、とくにこれから観光が日本の産業のひとつの柱になっていく中、接客は日本が誇るものだと思いますし、僕はいつもスタッフに「君たちは最もトレンディな仕事をしてるんだよ」と伝えています。高級レストランやホテルの接客が素晴らしいところは三つ星だとか五つ星だとか、欧米にもあるじゃないですか。でも、1本100円の人参を売っているような庶民の行くスーパーで、接客にこだわっている国は日本だけだと思うんですよ。

喜多村:確かにそうですね。社会主義国などはサービスという概念がないですし、海外に行くと物を投げてくるような国もありますからね(笑)

伏見:笑顔が自然なものとして接客できるのも日本の強みだと思います。もちろん、業態や企業の考え方によってはレジを省人化、無人化していく流れもありますが、一方ではそれと真逆のサービスを欲しがるお客さんや、提供したがる経営者の方々が出てきます。そうした点で、私たちの仕事はなくならないと思っていますし、「笑顔」という付加価値はますます大事になってくると思います。

スーパーマーケットの人手不足を解消するために必要なこととは

創業以来22年、笑顔の接客にこだわり続ける伏見啓史代

喜多村:昨今、お客様からのご相談はどのようなものが増えていますか?

伏見:弊社への発注理由にも直結しているのですが、一番深刻なのは人手不足です。まあ、うちとしては接客の質を上げたいという相談の方が嬉しいといいますか、決してマンパワーの供給で認められたいとは思っていないので複雑ではあるのですが……人を扱うビジネスは弊社の方が長けていることもあって、現実問題、人が採用できない、うまくお店が回らないという相談ですね。あとは過度なクレームへの対処に関する相談もあります。

喜多村:いわゆるカスハラですね。勘違いさせないようにしないといけませんね。

伏見:ただ、近年は酷いクレーマーは何のプラスにもならないとして「出禁」を明確にしていく方針の企業も増えています。その辺は、わりとドラスティックに変わってきていますね。

喜多村:人手不足とおっしゃいましたが、例えば「スターバックスの店員はカッコよくて、コンビニのレジはスーパーよりはマシ」みたいなイメージがあるとか、近所のスーパーだと知人に見られるのが嫌だから、ちょっと遠い店舗で働くというような話も聞きます。

伏見:その辺は業界の努力が足りなかった面があるかもしれませんが、どうしてもスーパーマーケットは学生や主婦がアルバイトしたい上位職種には入ってこない。それも人手不足に拍車をかける要因になっていると思います。

喜多村:昔、人気のない学校が制服をデザイナーズブランドに変えたら急に生徒が集まるようになったという話があるじゃないですか。日本のスーパーは食品の比率が高いのだから、マルシェストアみたいな呼称にして、店員さんもマルシェ・コンシェルジェみたいな名前にするとか、我々も一般の方からそのような提案があれば受け付けたいくらいです。

伏見:おっしゃる通りで、僕はスーパーマーケットという名称自体、捨てるべきだと思います。スーパーのレジ打ちで生計を立てることが、どこか悲哀の対象のように聞こえるくらいのイメージですから。リブランディングが必要です。

喜多村:スーパーは、本来、地域に密着した、安心安全な食料を提供する場所ですし、もっと誇りを持って関わってくれるようなブランディングを提唱していきたいですね。

伏見:それと営業時間の短縮と定休日の復活も行った方がいいと思うんです。365日休みがない店舗は、店長と社員の働き方が過酷になるんですよね。経営者はシフトを組んで回せばいいと言うのですが、実際はできないんですよ。私が小学生の頃は、ふつうに近所のダイエーも週1日休みがあったのですが、だんだん休日のある店舗が減っていった。

喜多村:私が21歳でヨークマートに入った時は火曜日が定休日でしたよ。

伏見:ですよね。どんどん貧乏性のようになっているんですよ、日本は。ヨーロッパなどは営業規制がある国も多く、日曜を休息の日として尊重したり、早朝や夜間の営業に制限を設けたりしています。もちろん、働き過ぎを防止する意味もあります。日本のスーパーは不人気であるにも関わらず営業時間が長いのだから、過酷になるに決まっています。

喜多村:僕がかつて働いていたのは惣菜の現場でしたが、半年後にチーフになってもワンオペで、その後、青果に移動すると毎朝5時50分入りでした。なおかつ夜の10時までいましたから、サービス残業だけで月160時間くらいでしたよ。休みの日も社員は発注しないといけません。最近は、正月休みを導入する企業も出て来ましたし、昔より良くなったとは聞きますが。

伏見:ちょっとずつ良い流れにはなって来ているんですけどね、まだ全然足りないと思います。実は、定休日を作った企業さんの売上の減少幅は、せいぜい2%だったという事例もあります。定休日の固定費は削減できたため、利益は保てたそうです。また、元旦しか休まなかった企業さんが30店舗、一斉に月1で定休日を設けたところ、売上が落ちた店は12店舗にとどまり、18店舗は現状維持か逆に売上がアップしたそうです。1年12日×30店舗ですから思い切った休日の導入に見えますが、食料品って、人の胃の中に入るものですよね。店を開ける閉めるに関わらず、人間の一ヶ月で食べる量は同じなんですよ。だから定休日を作っても売上が減るわけではないんです。

接客販売の地位ややりがいのためなら、どんどん新しいことに挑戦したい

スーパーでの現場経験も持つ喜多村理事長は、人に頼り過ぎてきた小売業の現状に警鐘を鳴らす

喜多村: 結局、みなハツカネズミのように、横を見ながらクルクル回っている。止まりたいけど、向こうが回っているから降りられず、今に至っているわけですよね。そう考えると、新型コロナのときによく世界が止まったなと。

伏見:ZoomのようなWEB会議ができるようになったのは、ある意味、コロナの恩恵ではありますね。

喜多村:社会が変わることで我々も変化するわけですが、我々の方から変えることもしていかないといけないと気付かされます。伏見社長はAIや企業のDX化が進んでいく中、どのような人材を求め、育てようと思っていますか?

伏見:弊社の業務はレジのアウトソーシングのほか、サービスカウンターやラウンジの運営のアウトソーシングですとか、販売促進や加入促進といったプロモーション、フランチャイズ加盟店のオペレーションなどにも業務が拡がっています。ただ、やはり一本筋は通さないといけませんので、先ほどお話しした「笑顔で日本を元気にします!」という企業ミッションを立て、20年の節目には「接客販売の地位や、やりがいを上げていこう」といったパーパスも策定しました。そこを外さなければ、自分のやりたいことに自由に挑戦できる土壌が弊社にはあります。弊社は「ネットスーパー」や「みえる翻訳」といったDXツールも開発していますし、アナログとデジタルを融合した新しい接客に興味がある人などは、ぜひチャレンジして欲しいなと思っています。

喜多村: チェッカーサポートさんが、従業員満足度の向上のために意識していることはどのようなところでしょうか?

伏見:会社についてどう思うか、仕事に対してのやりがいはどう感じているかといったサーベイを年に3回程度取っています。従業員のモチベーションが高くないと、当然、会社は良くなりませんので、定点観測を行って、会社全体のモチベーションを常に計りながら課題の改善に努めていますね。 喜多村: 公開経営指導協会の初代理事長は「企業が潰れる時というのは、創意をなくした時だ。逆に潰れかけた企業が立ち直るのも、その企業が創意を持っているからだ」と説いていました。みなが横を見ながら同じような立ち位置にいる中で、もう一歩先を行くためには、独自の考え方を持つ人財が全てだと思うんです。それぞれ業種は違いますが、共にこれからの時代、リーダーシップをとって業界を元気にしていける人財を育てていきたいですね。本日はありがとうございました。


◆伏見啓史(ふしみ けいし)
大手広告代理店に勤務中、流通小売業向けの人材派遣事業の部署を新設し、統括責任者に就任。
2002年、レジ業務委託のパイオニアとして株式会社チェッカーサポートを設立し、事業を拡大。

株式会社チェッカーサポート
所在地:東京都江東区富岡2-9-11 Tokyo Monnaka Village 4F
URL: https://www.checkersupport.co.jp/

◆喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 評議員理事・校友会副会長

一般社団法人 公開経営指導協会
所在地:東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
URL: https://www.jcinet.or.jp/

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