世界を元気にする日本人の誇りを持つ熱き挑戦者たちリレー対談 日本の将来はあなたによって創られる!<第6回>日本料理界の常識を変える、気鋭のシェフのブレない信念

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公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏がさまざまな分野の経営者と、日本を元気にするための英智を語り合うリレー対談。第6回目は、料理界の昔ながらの慣習に異を唱え、23歳で懐石料理店「有涯」を銀座に出店した注目のシェフ、藤井亮悟さんの登場です。

目次

「料理人の修行は10年」の慣習が人の成長を止めているのではないか

左が藤井亮悟さん、右が喜多村豊さん

喜多村:本日は、日本料理界の大型新人と噂される藤井亮悟さんのお店「有涯(うがい)」へお伺いしました。23歳という年齢で銀座の一等地にお店を出されたということですが、まずは料理人をめざしたきっかけや、オープンまでの経緯をお聞かせいただけますか?

藤井:日本料理をめざしたのは父の影響が大きいですね。子供の頃から寿司職人だった父の姿を見ていたので、自然と料理人になりたいという気持ちが生まれて。高校に進学するより料理をしたいと思って、15歳のときに大阪・京都で修行を始めました。当時の親方に「東京の料理も見たほうがいい」と勧められて東京や箱根で修行し、21歳の時に神楽坂の会員制のお店を立ち上げから任され、一昨年の12月に「銀座 有涯」をオープンしたという経緯です。

喜多村:高校に行かずに料理の世界に入ったんだ。修行時代は苦労されたんじゃないですか?

藤井:そうですね。今の時代、お店も調理師学校に行ってる子を雇うのが一般的ですが、高校も出てない15歳は雇えないという店も多くて、最初は父の修行先や監修していたレストランに入れてもらった感じです。でも、やっぱり想像していた通り、厳しかったですね。どこのお店でも師弟関係はありましたし、雪が降ったら朝4時に起きて先輩の車が出せるように雪かきしておくようなことは当たり前です。

喜多村:日本料理って、最初は包丁も触らせてもらえないとか、魚をおろすにも細かい作法を徒弟制度で教わると聞くんですが、藤井さんも修行時代はそうだったんでしょうか?

藤井:おっしゃる通り、普通はまず包丁を握るまでに何年もかかってしまうんですよ。それで僕は仕事の前の早朝、魚屋さんに入って魚の扱い方を覚えたり、家でも休まず身に付けられる技術は自分で身に付けていった。先輩に言われる前に先輩の仕事を奪っていくような形で、どんどん仕事を振ってもらうようにしていったんです。

喜多村:でも、それって入ったばかりの子にとっては、なかなかできないことですよ。どうしてそんな、型にはまらない動き方ができたんでしょうか?

藤井:それは本能ですね。先輩からの指示を待っているだけでは駒にされるだけだと思ったので。料理界では、料理を美味しく作れることが正義だと思いますし、そのために僕はこの世界に入ったわけですから。もちろん自分の仕事はやりますけど、先輩方がダラダラやるんだったら、その分、僕にやらせてくださいっていうスタンスでしたね。

喜多村:うちの部下には、上司とぶつかったとき、僕にLINEでその不満を送ってきたりする子もいるんだけど、例えばそういう理不尽な上下関係がある中で、上の人に直接意見をぶつけることはあったの?

藤井:それはもう、常にぶつけてました。おやっさんでも先輩でも。もちろん無茶苦茶反論されますけどね。僕は一つの店にあまり長くいたくなかったので「1年で次の店に行くと決めていた」ってことにしてるんですが、実際は先輩方に噛み付きすぎて、居づらくなって次の店に行ったという方が正しいかもしれません(笑)

喜多村:それは凄いなあ。「相手に自分を受け入れるキャパはない」くらい思ってたんじゃない?(笑)

藤井:いや、そんなことは思ってないですよ。先輩方から言われて納得することだってありますし。ただ、飲食業界って「1か所で5年10年修行しないといけない」という慣習が先行していますよね。僕は、それがかえって人の成長を止めているんじゃないかって思ってるんです。修行は自分のための修行であって、誰かのためにやってるわけではない。だから「自分はこうしたい」ということも出てきますし、それは誰かに愚痴っても仕方ないですから、先輩であっても直接その人に言いたかったんです。

日本は食材の宝庫。生産者をリスペクトした料理を作りたい

喜多村:厳しい徒弟制の中で先輩たちとぶつかりながらも、こうして今の君があるっていうことは、何だか自分も勉強になります。僕らも会社組織で若い人たちとコミュニケーションを取るときは、その声をどんどん聞き取らないといけないんでしょうね。今、こうして銀座でお店を出されていますが、藤井さんの料理に対するポリシーを教えていただけますか?

藤井:一番大事にしているのは食材と生産者さんですね。仲良くしてくれている生産者さんの食材やあまり使われない食材を自分の手で美味しくしたいなと思ってます。奇をてらった料理をしたいわけではなくて、あまり僕が出過ぎてはいないんだけど、やっぱり僕だよね、と思ってもらえるような料理。そのバランスを考えています。本来あるべき姿の食材が、料理人のやりたいことばかりに寄ってしまって「ああ、こういう風に使っちゃったんだ…」と思われるのは本意でないので、あくまで生産者をリスペクトした料理を作りたいですね。

喜多村:なるほど。常連さんの話では、藤井さんの料理は、すごく素材推しで優しい味だと。調味料をあまり使わず、かといって味が薄いわけでもない。食べた後も体がラクだとおっしゃっていました。

藤井:醤油やみりんを使えば、料理って誰でも美味しくできるんですよ。誰でもできることをしても面白くないですし、生産者さんをリスペクトしているからこそ、調味料を極力使わず素材の味を引き出せるようにしています。

喜多村:ぜひ食べてみたいですね。「有涯」を代表するメニューはどんなものがあるんですか?

藤井:何を一番食べていただきたいかというと、お米です。僕自身も御殿場でお米を育てていて、お店では旬の土鍋ご飯と鰻の2種類のご飯を出しています。鰻は、僕の修業先が関西だったので蒸さずにそのまま焼きます。炊きたての白米と焼きたての鰻、本当に美味しいですよ。

喜多村:箸休めの「焼き茄子のアイスクリーム」も人気だそうですが、そうしたクリエイティブ面はどのように考えつくものなんですか?

藤井:焼き茄子のアイスクリームは、神楽坂のお店にいたとき先付として思いついたのですが、暑い時期にお客さんが飯田橋駅から坂を登ってくると、店に着いたとき、体が火照っている状態になってしまうんですよね。その体を一旦冷やしていただきたいと思って。

喜多村:一流の料理人はお客さんの気持ちや行動も踏まえて考えるんですね。お店はカウンター6席と個室1室ですよね。料理は1年通してどのように提供していますか?

藤井:基本的には1ヶ月に1回変えてますね。日本はいい食材がありすぎて、変えたいときは月に3回変えるときもあります。

喜多村:それはリピーターには嬉しいですね。僕も何度か取引先の方を連れて同じ店に行くことがあるんですが、お品書きを変えてくれるのは助かります。

目標は、最年少でのミシュラン獲得

喜多村:銀座にお店を持つのは、ふつうは最終目標のように思えるのだけど、今24歳ですよね。何か自分を駆り立てる夢のようなものはあるんでしょうか?

藤井:最年少でミシュランの星が欲しいというのは、ずっと思っています。今まで入った店は、20人くらい若いスタッフがいて、その上に30〜40代の先輩たちがいて、さらに50〜60代のシェフたちがいる大きなチームで、40代でも「若いシェフだね」と言われていました。できることはそれほど変わらないのに、それが僕にはすごく違和感で。それでお店を早く出したいと思っていましたし。

喜多村:ミシュランはホスピタリティも含めて評価されると言いますよね。その辺も意識されているのかな?

藤井:僕は料理に集中しちゃう方で、喋るのはあまり得意じゃなくて。神楽坂のお店でもお客さんに「もっと話すようにした方がいいよ」とよく指摘をいただいてました。なるべく他業種の方々と関わって、いろいろな方々から知識を得るようにしていますね。今は同い年の女将とお店をやっていますが、その空気感も楽しんでいただければと思っています。

喜多村:ミシュランって一ツ星から三ツ星まであるじゃないですか。僕らはお客さんの立場でなんとなく指標にするわけだけど、シェフの方はどう感じているんだろう?

藤井:僕は全然違うと思います。けど、「最年少で獲りたい」と周りの料理人に話しても「そんなにミシュランにこだわらなくても良くない?」って言われることが多いんですよね。僕は三ツ星がどの程度か分かりませんが、一ツ星でも二ツ星でも獲得してから語りたいですし、ある人が美味しいと思っても別の人は美味しくないと感じたりするのが料理です。だからこそミシュランという評価は分かりやすいと思っています。

喜多村昔、僕は小室哲哉さんのマネジメントをしていたんですが、彼が世に出て売れたとき、周りのミュージシャンには「あんな曲は音楽じゃない」という人もけっこういました。今の話を聞くと、それを思い出します。「登った人にしか見えない景色」ですよね。

藤井:それはすごく思います。ミシュランを20代で獲得した和食のシェフはまだいないと聞きますが、僕はあと2年以内に取りたいなと。

喜多村:これまでのスピード感からすると、それも不思議じゃないですね。最後に、この対談のテーマとしてみなさんに聞いているのですが、若くして厳しい世界で活躍されている藤井さんにとって、これからの日本にはどんな人財が求められると思いますか?

藤井:うーん、僕とこの店で一緒に働きたいという人がいたとして、僕がその人の何を見るかといったら、その人の「信念」なのかなと思います。僕自身、いろいろな人と接したり、いろいろなことを経験する中で、けっこうブレそうになるときがあるんです。でも「自分はなぜ料理を始めたんだろう」、「なんで料理を作ってるんだろう」という信念だけはブレていないし、そこだけは自信を持って言える自分の強みだと思っているので。一緒に仕事していく人たちにも自分の信念を貫いてほしいし、流されないでほしいというのはありますね。

喜多村:人って壁にぶつかると「なんでこんなことになってるんだろう」って思いがちだけど、もともとは自分で決めたことなんだよね。「自分で決めてここにいるんだ」と、もう一度自分と会話するって大事ですね。

藤井:うん、そこがすごく大事なんだと思います。過信、慢心せず料理に真摯に向き合って、僕を支えてくれている方々を幸せにできるよう、これからも頑張ります。

藤井亮悟 (ふじい りょうご)
有涯 料理長
https://www.instagram.com/ryogo_ugai/

【お店情報】
銀座 有涯
東京都中央区銀座1-4-6 紅雀ビル B1F
050-3138-5797
17時30分~20時30分
不定休

お店のご予約はこちら
https://www.tablecheck.com/ja/shops/ugai-ginza/reserve

デリバリーのご注文はこちら(BUTLER TOKYO)
https://butler-tokyo.com/collections/銀座-有涯

『食べログマガジン:感動を呼ぶ斬新な懐石料理! 日本料理界に飛び級で現れた期待の大型新人が描く展望に迫る』
https://magazine.tabelog.com/articles/371134

喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 評議員理事・校友会副会長

一般社団法人 公開経営指導協会
東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
03-3542-0306
URL: https://www.jcinet.or.jp/

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