日本の美、匠の技が受け継がれる「佐賀市」歴史と風土に培われた、伝統工芸に出逢う旅

2025 11/04

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URBAN LIFE METRO × AFFLUENT 《特別企画》伝統工芸をあなたの暮らしに
本特集は、東京メトロ沿線の上質なライフスタイルを発信する「URBAN LIFE METRO」と、ハイエンド層に向けて上質な時間と価値あるモノ・コトを提案するライフスタイル誌「AFFLUENT（アフルエント）」がコラボレーションしてお届けする特別企画です。
伝統とモダンが融合する“佐賀のものづくり”の魅力を、暮らしの中で愉しむヒントとともに紹介します。

手仕事だからこそ、同じものは二つとして生まれない。
使うほどに愛着が増し、ずっと手元で大切にしたくなる一点物の伝統工芸品。
「佐賀錦」「肥前びーどろ」に出逢える街、佐賀市へ。

金銀の箔糸が織りなす、格調高く華やかな紋様　佐賀錦（さがにしき）

指先で織りなす奇跡。上品で趣豊かな錦模様
江戸時代末期、肥前（佐賀県）鹿島藩鍋島家の女性たちにより創案作成されたのが起源といわれる「佐賀錦」。９代藩主の正室・柏岡の方が病に伏せっていた折、風雅な天井の網代組（あじろぐみ）の美しさに心惹かれ、その意匠を暮らしの小物（織物）に反映させたのが始まりだという。

金・銀・プラチナ・漆箔などを貼った特製の和紙を細かく裁断した経紙に、絹の撚り糸を染色した緯糸を竹のヘラで拾いながら織り込むことで、網代、紗綾（さや）型、菱型など、多種多様な紋様を手仕事で織り上げていく。精微な技術を要する非常に根気のいる作業のため、経験豊富な織り手でも一日わずか数センチほどしか織ることができない希少な工芸品でもある。絢爛豪華で気品がありながら、手作りの素朴であたたかい魅力と和紙の温もりを秘めた「佐賀錦」は、日本の美術工芸品の白眉とも称されている。

海外からも称賛される、世界に誇る「贈り物」
明治43年にロンドンで開催された「日英大博覧会」に出品された際、日本手芸の極致と称賛を受け、一気にその名声を遠く海外にまで広めることになった「佐賀錦」。当時はまだ鹿島錦と呼ばれていたが、出品を機に「佐賀錦」と名づけられ、以後その呼称が定着したといわれている。

金銀の箔糸が生み出す、優雅で品格ある紋様の美しさはもちろん、織り手の巧みな技、時間、心がひとつに織り込まれた「日本文化の象徴」として評価を受ける「佐賀錦」は、世界各国のＶＩＰへの贈答品にも選ばれ、国際親善の証としての役割を果たすまでになった。日本の誇りを海外に伝える伝統工芸品として、地域の宝として、暮らしを彩る美として今もなお息づき、次世代へと受け継がれている。

佐賀市内の「旧福田家」では手織りの体験ができる。ご自身の手でその魅力の一端に触れてみてはいかがだろう。

武家の女性たちの手仕事として始まり、現代の織り手へと技術が受け継がれてきた「佐賀錦」。
ハンドバッグ一つを完成させるまでに、数ヶ月を要するという。

フォーマルな物から現代のライフスタイルに合わせた日常使いできる小物まで、多彩な製品を展開。留袖や訪問着に合わせて使える草履バッグセットやビジネスシーンで活躍する名刺入れやカフスボタンも。

伝統技術を次世代へと伝える「佐賀錦振興協議会」
「佐賀錦」の技術の普及と後継者育成を続ける「佐賀錦振興協議会」。
佐賀市歴史民俗館の一角にある「旧福田家」では、市民や観光客を対象にした初心者でも参加できる佐賀錦の手織り教室や体験講座を開催している。
佐賀県佐賀市松原4-3-15
0952-22-4477

江戸末期から続く伝統と、柔らかな光をまとう。肥前びーどろ（ひぜんびーどろ）

歴史の息吹きが宿る、ガラスの美しい輝き
佐賀県重要無形文化財に指定されている手作りガラスの伝統工芸「肥前びーどろ」。江戸末期、佐賀藩に設置された理化学研究施設「精煉方」のガラス窯でフラスコやビーカーが作られたのが始まりといわれる。

長崎に伝わったビードロ技術を佐賀で独自に発展させた「肥前びーどろ」の最大の特長は、型を用いずに成型を行う「宙吹き」と呼ばれる製法。職人が息を吹き込み、一つひとつ手作りされる吹きガラスには小さな気泡や柔らかな揺らぎが閉じ込められ、自然で優しい風合いが魅力。同じ商品であってもその形や色の出方には微妙に違いが生まれ、その味わいこそが、「肥前びーどろ」が長く愛され続けてきた所以でもある。原始的でありながら高度な技術と手間ひまを要し、江戸時代から変わらぬ美しさを内包する手作りガラス。その存在感はまさに唯一無二といえるだろう。　

一点一点異なる手吹きの風合いと、ガラス内の気泡が生む柔らかな美しさが魅力の「肥前びーどろ」。
5色の色ガラスで虹色を表現した「虹色シリーズ」も人気だ。

習得に10年以上を要する、幻の技法
精煉方から独立する形で明治36年に創業し、現在では「肥前びーどろ」の唯一の製造元として伝統を守り続ける「副島硝子工業」。同工房では、世界的に見ても「肥前びーどろ」でしか見られなくなった、「ジャッパン吹き」が今なお受け継がれている。

習得に10年はかかるといわれる宙吹き技法の中でも特に難しいとされる「ジャッパン吹き」は、一般的な鉄製の吹き竿ではなく、一人の職人がガラス製の竿を同時に２本操ることで注ぎ口を形成する宙吹きの技法の一種。ガラスを成型しやすくするため何度も温め直し、温度を一定に保つ焼き戻し作業をせず一発勝負で仕上げることから、素早く美しく仕上げるには経験が必要となる。120年以上の歴史の中で培われてきた文化をアクセサリーなどの新たな価値へ昇華させている「肥前びーどろ」は、伝統と現代性を融合した「身にまとう工芸」としても人気を集めている。