東京の夜が“30分化”している ― ビールと時間の新しい関係

  • URLをコピーしました!

サントリーは1月13日、都内で開催した2026年国内酒類事業方針・ビール事業方針の発表の中で、缶ビール1本を飲みきる平均的な時間が2019年の約15分から、2024年には約30分へと伸びていることを示した。
ビールを取り巻く時間の使い方が、生活者の中で変化してきていることがうかがえる。

サントリー(株)代表取締役社長 西田 英一郎

東京の夜は、いつからこんなにも静かになったのだろう。

終電を気にしながら慌ただしく飲む夜もあれば、家に帰り、腰を落ち着けて過ごす時間が増えてきた。その変化は、感覚ではなく、数字にも表れている。

サントリーの調査によると、缶ビール1本を飲みきる時間は、2019年の平均約15分から、2024年には約30分へと伸びているという。
たった15分の差だが、この「30分化」は、東京の夜の過ごし方が変わったことを象徴している。

「飲む」より、「時間を過ごす」一杯へ

ここから先は、編集部としての視点になる。
15分という短い時間で飲み切る一杯が、仕事終わりの区切りだったとすれば、
30分かけて向き合う一杯は、夜の時間そのものと向き合う行為になりつつあるようにも見える。

スマートフォンを片手に、動画や音楽を流しながら。誰かと話し、あるいは何もせず、ただ時間をやり過ごす。今の東京では、ビールは、夜の時間をいっそう豊かにしてくれる心強い存在になっている。

サントリーが2026年に向けて示した国内酒類事業方針は、この変化を「飲酒量の増減」ではなく、生活者の時間感覚の変化として捉えている点が興味深い。

プレミアムに求められる価値の変化

中味では、麦芽由来の香味成分の解析を深め、うまみに寄与する成分の引き出し方を進化。
これにより、もともと「ザ・プレミアム・モルツ」の特長として大切にしてきた”深いコク”と”心地よい余韻”がより明確に感じられる設計になった。
パッケージも印象的だ。
「ザ・プレミアム・モルツ」は、従来の金を基調としたデザインから、紺をベースにしたデザインへと刷新。ゆとりや余白といった、現代の生活者が求める「心の豊かさ」を視覚的にも表現している。

「ザ・プレミアム・モルツ」は、30分化する夜に最も象徴的な存在だろう。
かつてのプレミアムビールは、特別な日の“ご褒美”だった。しかし今、東京の人々の間では、日常の中でゆっくりと向き合う一杯として、その価値を見出す楽しみ方が広がりつつある。
「ザ・プレミアム・モルツ」の特長は、この時間をかけてゆっくり愉しむスタイルとぴったり合致している。
グラスに注ぎ、泡を眺め、少しずつ口に運ぶ。プレミアムは「高級」ではなく、「長く付き合える一杯」へと意味を変えつつある。

東京の夜に見る“区切り”のかたち

一方で、東京の夜がすべて“ゆっくり”になったわけではない。
仕事終わりに一度、気持ちを切り替えたい。
「サントリー生ビール」は、そんな感情に寄り添う存在として楽しまれている。

のどごし。
「グッとくる飲みごたえ」と「すっきりとした後口」。
この味わいが、「今日を終える」ための明確なスイッチとして機能しているのではないか。
サントリーが生ビールを“その日の区切りとして楽しむ存在”と位置づけている点は、東京の生活実感と重なる。

飲まない、という選択もまた東京的

30分化が示しているのは、「たくさん飲む」ことではない。むしろ、「今日は飲まない」「今日は軽く整える」という選択肢が、ごく自然に夜の中に組み込まれたことだ。
「オールフリー」や「オールフリー〈ライムショット〉」などのノンアルコール飲料は、アルコールの代替ではなく、夜のリズムを整えるための一杯としても存在している。
飲むか、飲まないか。
大切なのは、その日の自分に合ったスイッチを選べることだ。

30分という、ちょうどいい余白

30分は、長すぎず、短すぎない。
仕事と私生活のあいだに生まれた、ちょうどいい余白。
サントリーのビールやノンアルコール飲料は、その余白をどう過ごすか、という問いに対する答えでもある。

東京の夜は、派手さよりも納得感を求めるようになった。
慌ただしく過ごす夜から、一杯とともに夜を過ごす時間へ。 30分化した東京の夜は、静かに、しかし確実に、都市のライフスタイルを更新している。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!