裕福な家の出ながら極度の芸術家気質で清貧を好み、「画壇の仙人」と呼ばれた画家、熊谷守一。晩年に体調を崩してからは20年にわたって、豊島区の小さなアトリエからほとんど外に出ずに引きこもり、ストイックに作品を発表し続けたという異色の人物です。そんな生粋の芸術家、熊谷守一の作品を多数所蔵する熊谷守一美術館で、現在39周年の記念展が開催されています。

晩年こそアトリエからほとんど出なかった熊谷守一ですが、体を悪くする前、70歳ごろまでは日本のさまざまな地を訪れ、その風景を抽象画におさめていました。今回の記念展では、そんな熊谷守一の旅がフィーチャーされ、旅先の風景を描いた作品を鑑賞することができます。

たとえばこれは1961年に発表された「山道」。雄大な山を背景に、山道を行く馬子と旅人が描かれています。熊谷守一のスケッチ帳には本作のもとになったと思われるスケッチが残され、「熊の湯道」と記載があることから、長野県北部、志賀高原の熊の湯の風景をモチーフにしたと考えられています。青々とそびえる山に、旅人と馬子の黄金色の蓑笠が 映え、爽やかな初夏を感じさせてくれる作品です。
本来は、彼の故郷である岐阜県の「熊谷守一つけち美術館」に行かなければ見ることのできない作品の数々を鑑賞する貴重な機会です。ぜひ、熊谷守一美術館を訪れ、素朴ながらも旅情あふれる抽象画の数々に触れてみてはいかがでしょうか。
【イベント情報】
熊谷守一美術館 39周年展 守一、旅を描く。
東京都豊島区千早2-27-6
03-3957-3779
2024年4月16日(火曜)〜2024年6月30日(日曜)
10時30分~17時30分
月曜休館