世界を元気にする日本人の誇りを持つ熱き挑戦者たちリレー対談 日本の将来はあなたによって創られる! <第4回>金融DXのオンリーワン企業にとって第一の人財は、時代に関係なく「まじめ」に取り組める人

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公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏がさまざまな分野の経営者と、日本を元気にするための英智を語り合うリレー対談。第4回目の今回は決済サービスで企業の業務効率化を支えるビリングシステム株式会社の代表取締役、江田敏彦さんをお迎えしました。

目次

日本の決済サービスの開発・導入にいち早く取り組んだビリングシステム

左が江田敏彦さん。右が喜多村豊さん

喜多村:今回ご紹介するビリングシステム株式会社は、さまざまな決済サービスを展開され、2008年には東証マザーズにも上場しています。代表の江田さんは三井銀行で23年間勤務された後、ビリングシステムを設立されていますが、どのような想いで起業されたのでしょうか?

江田:弊社の創業は2000年6月なのですが、90年代のバブル崩壊以降、日本経済の低落によって金融機関を取り巻く環境は大きく変わってきました。銀行や証券会社の倒産や国有化が進み、それまで企業や地域経済の活性化を支援していた金融機関は、生き残りをかけた活動が中心となってしまったのです。

喜多村:金融機関の本来の理念が後回しになっていたと。

江田:はい。当時、私は金融機関が企業と電子データで決済まわりを効率化するEDI(Electric Data Interchange)の開発を担当していましたが、そうしたサービスに取り組めるのは大企業に限られていて、中小企業が使えるものはありませんでした。一方、アメリカでは、すでにインターネットを利用した金融業務の効率化の試みが始まっていまして、このままでは日本の金融サービス、とくにネット決済の部分は米銀に蹂躙されてしまうという強い危機感を抱いていたんです。そこで、金融機関に関係なく、ハブとして決済を効率化できるような機能を作らなくてはと。

喜多村:それで立ち上げたのがビリングシステムだったのですね。

江田:弊社は分類的には「収納代行会社」となっているのですが、基本理念は「決済基盤を軸とした新しいワークフローを提供し、お客様の利益を創出します」というものでして、いわば、ネット環境を利用して、企業の決済業務の効率化を支援したり、それに基づく金融機能の効率化を支援する会社です。

喜多村:中小企業も使える決済サービスとのことですが、具体的にはどのようなものでしょうか?

江田:いくつかのサービスを展開していますが、まず分かりやすいところでは、自賠責保険の収納と消込みです。みなさん、自動車を買ったり車検を通したとき、保険会社の代理店であるディーラーさんや自動車修理工場に自賠責保険料を数年分払い込みますよね。代理店から保険会社へ「Aさんが支払いました」という情報が申し込み書類とともに送られ、保険が発効されます。この作業は20年前は全て手書きでした。保険会社のいくつかがこれを効率化しようとしたとき、僕が「共同の収納システムを一緒に作りませんか」という形で提案しまして、現在のシステムを作ったんです。

喜多村:ディーラーさんや修理工場が別々、保険会社さんが別々でもすべて一本化できて、個々の紐付けもできるというわけですか?

江田:そうです。弊社が全国の代理店から毎日お金を集めると同時に、保険会社に「今日はAさん、Bさん、Cさんの保険料を集金しましたよ」という収納確定情報をお届けするので、保険会社は消込みができて保険が発行できる。このシステムによって、これまで1週間かかっていた自賠責保険の発行は翌日に発行可能となりました。ペイジーを活用した自賠責保険の収納と消込みは100%うちがやっています。

払込票の決済が、スマホで簡単に!便利を実感できる「PayB」とは

創業時は早すぎる発想から周囲の理解を得られなかったり資金集めにも苦労したという江田さん

喜多村:御社はBtoCのようなサービスも展開されているのでしょうか?

江田:証券為替のクイック入金サービスというものを展開しています。インターネットで株式売買や為替売買をする際、画面上で手数料などの売買条件を確定し、必要資金をお支払いするわけですが、確定した支払い総額や登録情報を利用者の取引銀行につなぎ、リアルタイムで決済するサービスです。こちらも弊社が作ったシステムで、日本のほとんどの証券会社でご利用いただいています。弊社のお客様は企業なのでBtoBですが、企業側はBtoCで使っている形になりますね。基本的に「N対1」のハブの機能を開発して提供するというのが、我々のメインビジネスなんです。

喜多村:今おっしゃったようなハブ機能となる集金システムの構築ですが、例えば、100万円を超えるような大学の学費を払う際、特定の金融機関の窓口でないと納入手続きができないといった問題があります。そうした問題を解消する取り組みもされているそうですね?

江田:その取り組みは「PayB」というスマホ決済ですね。まだ知らない方も多いと思いますが、ほかのスマホ決済とは違う特色があります。まず、他社のPay事業者さんなどがウォレットにチャージしてからスマホで支払うのに対し、「PayB」はデビットです。つまり銀行口座やクレジットカードからダイレクトにスマホ支払いができる仕組みなんです。提携金融機関はゆうちょ銀行やメガバンク、全国の地銀や信金、農協も利用可能で、ほぼ全国をカバーしています。

喜多村:例えば銀行窓口に行かないと振込できなかったのが、PayBだと自宅からできるというわけですか。

江田:そうです。お父さんお母さんの持っている金融機関の口座に残高があれば、家でお茶飲みながらスマホで入学金や学費を支払える。PayBは、払込票のバーコードをスマホで読み込んで支払えるという点も大きな特徴です。通常、通販や税金の払込票はコンビニなどに行ってレジでピッとやって支払いますが、スマホがバーチャルコンビニになって、その場で決済できるわけです。地方税の統一QRコードにも対応しています。コンビニの払込票は年間に約11億件が発行・処理されていると言われているのですが、私どもの契約先加盟店から申告された年間発行件数の累計は、約9億件を超え、市場の約8割強をカバーしています。

喜多村:いろいろなところで御社のシステムが使われているわけですね。まだまだ可能性が広がりそうですね。

江田:ええ、これは他のスマホ決済とPayBとの大きな違いですが、私どもは日本で一番チャネルを持っていますので、PayBのチャネルを他のスマホ決済にも開放しているんですよ。請求企業側は負担なくさまざまな支払い方法が利用できるようになり、利用者も便利です。表には出てきていないけど一枚めくるとその基盤はうちのシステムというのが弊社のサービスの特徴ですね。現在は、病院や院外薬局などでの支払い環境の構築を進めていまして、患者さんが体調の悪い中、会計まで長い時間待たされたり、調剤薬局で薬代を支払ったりという負担を軽減できればと考えています。

フィンテックの現場でも「まじめ」に働く人こそ第一の人財

喜多村さんと江田さんの間では、エンタメ業界におけるチケット決済の新たなシステムづくりも進行中だ

喜多村:今回の対談では「人財」を一つのテーマとしてお伺いしているのですが、江田さんから見て、これからの時代に必要な人財とはどのような人財でしょうか?

江田:弊社はフィンテックという言葉すらなかった25年前に私が一人で創業し、現在はパートさんを含め約100名の社員がいますが、第一に言えるのは、その全員がまじめな働き者であることです。信頼できる人しか働いていません。これはフィンテックやDXという分野も時代も関係なく、必要なことだと考えます。次に、人は誰でも好き嫌いや得意不得意があって、それを自分自身分かっていない人もたくさんいます。部門や職位に関係なく、そうした周囲の人の好き嫌い、得意不得意を把握できて、うまく誘導したりサポートできる人。これも時代を超えて必要だと思いますし、自分もそうありたいと思っています。

喜多村:私ども公開指導経営協会でも人財教育を行なっているのですが、昨今は、相手に話しているように見えて、実は一人称で喋っている人も非常に多い。なかなか相手の立場を捉えることができない人が多い印象を持つんです。逆にそれができれば、いま、江田さんがおっしゃった適材適所を含め、リーダーシップを発揮することができるのではないでしょうか。

江田:その通りだと思います。「これからの時代」というと、ネットやDX、セキュリティや個人情報など、さまざまな対応が求められますが、我々や、我々の次の世代までの人間にとって、それらはここ5〜10年で急に求められるようになったわけで、全部できる人なんていません。でも、いま小中学生や高校生の世代はそういう環境で育っているので、当たり前のように身についています。だから、私がこれからの時代に求めるのは「何かできる人」ではなくて「人間性がしっかりしている人」なのかなと。

喜多村:私どもも人間性という点で、正直であること、善悪が見極められること、その場に適した対応ができるということを重視していますが、いまの若い世代を取り巻く環境が温室になりすぎているためか、海外に比べて壁に当たると弱いような人が多く、なかなか経験を積めていない感じもするんです。

江田:小さい頃から周りが何でもやってくれる中で育っているというのはあると思いますね。そういう意味では、自分の作業の本質が何なのか、何のためにこれをやっているのかを考えて仕事してくれる人は欲しい人財ですね。機械ではないわけですし、それが把握できていれば、コツコツ集中することの大切さも分かる。自分の仕事の周辺にも興味が向きますし、おかしいと思うことがあれば改善を図ることもできます。

喜多村:御社にはエンジニアの方も多いと思いますが、例えば優秀な大学の理工学部を出ていない専門学校卒の人でも、そういう人は伸びるということでしょうか?

江田:まさにそういうことです。弊社は今でこそ人並みの給与を支払えるようになりましたが、以前は一流大学からの応募は絶対ないような会社でした。逆に私どものお客様の方は、超一流の大学を出ている方がたくさんいらっしゃいます。そういうお客様から安心して使ってもらえる会社になれたということは、みんなでまじめに事業を作り上げてきたという以外の何物でもありません。より良くするには、より優秀な人も必要ですが、基本的にはまじめで逃げない人がコツコツ積み上げるのが大事だと思っています。

喜多村:今後、AIやDXという分野が進化していく中でも、人を育てるにあたって大切なのは「人として」という部分なんだなと。江田さんのような上場企業の社長さんからそうしたお話を聞けたことはホッとしましたし、説得力を感じました。本日はありがとうございました。

江田敏彦(えだ としひこ)
ビリングシステム株式会社 代表取締役
三井銀行(現 三井住友銀行)で23年間勤務後、企業の決済業務と多数の金融機関を一元的に結び、様々な決済ソリューションを提供することを目的として2000年6月にビリングシステム株式会社を設立。代表取締役に就任。

ビリングシステム株式会社
東京都千代田区内幸町1-2-2 日比谷ダイビル13階
03-5501-4400
URL: https://www.billingsystem.co.jp/

喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 評議員理事・校友会副会長(2003年〜2022年)
公益財団法人音楽鑑賞振興財団評議員

一般社団法人 公開経営指導協会
東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
03-3542-0306
URL: https://www.jcinet.or.jp/

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