PCケース、もう決めた? 990円の紙製「U」が秘める、老舗の職人技と“遊べる”デザイン 菅公工業株式会社x株式会社TOYBOX

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新年度から1か月。入学や入社など、ようやく新しい環境に慣れてきたという方も多いのではないでしょうか。
そんな中、学校や職場で毎日のように持ち運ぶノートパソコン、意外と悩ましいのが「PCケース」選びです。
機能性を求めてはいるけど、決め手に欠ける、、、結局は無難なものを選んでしまいがち。
そんな悩みを抱えていたアーバン編集部員が、ふと目を留めたのが「Uマルチクッションケース」というプロダクト。

お手頃な価格で、様々なシーンでワンポイントになりつつも、会社のベテラン先輩もご存知のマチ付封筒のようなPCケース。
目次

改めて見てみると不思議な構造

若い世代にはあまりなじみがないかもしれませんが、このハトメ(丸い金具)と紐でくるくると封をする独特の形状。実はこれ、昭和のビジネスマンたちなら誰もが一度は重要書類のやり取りで使ったことがある、お馴染みの茶色いマチ付封筒をモチーフにしているんです。会社のベテラン先輩なら「おっ」と反応するような、知る人ぞ知る見た目。

お値段は990円(税込み)とお手頃で、様々なシーンでファッションのワンポイントにもなる遊び心たっぷりのアイテムです。そして、目を惹くハトメをポイントに、全体のボディは一般的なPCケースとは一線を画す「紙」という素材!
実際に手に入れて使ってみると、その作りの「不思議さ」にどんどん惹きつけられていきました。確かにクッションは入っているのですが、よくあるプチプチ(気泡緩衝材)ではないことが手触りで分かります。エアクッションとは違う、カサカサという紙特有の心地よい感触。さらに、クッション材を一体どのように封入したのか分からないほど、つなぎ目の見えない美しい仕上がり。シンプルに見えて、よくよく観察すると非常に不思議な構造をしているのです。
「この不思議なPCケースは、一体どうやって作られているのか?」
気になった編集部が、製造元である「菅公工業株式会社」と、デザインを手掛けたクリエイティブカンパニー「株式会社TOYBOX」に問い合わせてみたところ、「ちょうど両社で製品会議をやるので良ければ」というありがたいお言葉が!さっそく会議の場へお邪魔する珍しい取材形式で、このケースに隠された秘密を直接伺ってきました。

不思議な「ぬるっと感」を生む内部構造

手にするまでは中にエアクッション(プチプチ)が入っているのだろうと思っていて、使用する内に空気が抜けて潰れてしまうのでは?という懸念がありました。
しかし、実物にエアクッションの感触はありません。カサカサという紙の音がしつつ、少ししっとりとした手触り。
構造を尋ねると、中にはスポンジ状のクッション材が入っていて、外側をクラフト紙で包んである3層構造になっているとのこと。
ネット通販などを利用される方は、商品が送られてくる丈夫な茶色い紙袋で馴染みがあるでしょう。郵送時の摩擦にも耐えられるよう、繊維の密度が高く作られている紙がクラフト紙です。今回採用されたのはリンテック社の新商品で、撥水性を持つ溶剤を染み込ませたクラフト紙だそう。完全防水ではありませんが、カバンの中の不意な汚れや、デスクの上のちょっとした水滴などを気にする必要がないのは、紙製品として非常に頼もしいポイントです。
一般的なクッション封筒は内側に気泡緩衝材がむき出しですが、「U」は内側も同じくクラフト紙のため、PCの出し入れの際にクッションが引っかからず、PCが“ぬるっ”と収まるような何とも言えない滑らかさを感じます。
金属やプラスチックのケースのような無機質な滑り方とは違い、紙特有の適度な摩擦と滑らかさが同居しているような感覚。
・・・ちょっと気持ち良い。

しかし、そうなると気になるのは、どのようにして3層構造を実現しているのか?という点です。

「えっ、そこ?」1枚の紙に見える、端ギリギリの糊付けの精度

「なるほど、中にはプラ状のクッションが入っているんですね!……ん?でもこれ、1枚の紙にしか見えないですけど?」

3層構造とのことだが、1枚の厚紙にしか見えない。

質問を投げかけると「えっ、気になるのそこ?」という感じで、実はクッションをクラフト紙の端ギリギリまで貼り合わせているのだと教えてくれました。
通常はズレや接着剤のはみ出しを防ぐため、少し内側に控えて貼るのが一般的です。しかし、長く使ってもフチがベロベロ剥がれない耐久性と、一枚紙のような美しさを両立するため、「うちはここを極限まで行くんです」と端ギリギリまで接着をしているとのこと。

貼り合わせ前。外袋、クッション、内袋の3層構造になっていることが分かる。

どのようにクッションが入っているかとても不思議な構造でしたが、まさか精度を高めるという徹底した正攻法だったとは!
この姿勢こそが、同社の製造技術の特色なのだとか。
その製造工程を、動画を見ながら深堀りして教えてもらいました。

糸で糊付け?手で貼り手でむしる!? 画像で追うユニークな仕掛けと人の手の介入

実際の製造は、動画で紹介されている通り、「印刷→型抜き→糊付け→たたむ→貼り合わせ」という順に進みます。その工程の中に、精度に繋がる仕掛けと人の手の介入が見て取れます。ここでは実際の製造ラインの様子をいくつかご紹介します。

糸で行う「端ギリギリの糊付け」

端ギリギリの糊付けは、特注の製袋機(せいたいき)での独特な機構によって行われています。
運ばれてくるクラフト紙に糊がついた糸を用いて接着が行われています。ギリギリを攻める同社の特徴を、この糊付けが支えています。

驚くことに、「糸(赤枠部分)」に糊をつけて紙に貼り合わせるという独特な機構。稼働しているのは、ワンオフで製造された年代物の「製袋機」。

「コンマミリ」の針金調整と、折り畳み

糸で糊が塗布された後、紙をケースの形に折り畳む工程に入ります。

糊が塗布されたクラフト紙(右)がローラーで運ばれ折りたたまれます(中央)。デザインの左右が寸分狂わず貼り合わされて、クラフト紙がローラーで圧着されます(左)

注目するのは折り畳まれる工程での、この針金の治具。
この針金によってクラフト紙が折られますが、鉄製の機械は気温や湿度によって日ごとに変化が生じてしまい、その都度調整が必要です。
毎日、経験豊富な社員が機械の針金を曲げながら「0.何ミリ単位」で微調整を行い、貼り合わせの精度を保っているそうです。

貼り合わせに必要な折り目をつけるための要となる治具。この部品が少しでもずれると中心部がずれてしまう。

1枚の紙にまとめる「3層構造の貼り合わせ」

PCケースならではの3層構造の貼り合わせにも、人の手が入ります。
プレスして折り目をつけ、外袋、クッション、内袋と正確に封入した後、最後は人の手によって貼り合わせが行われます。

外袋、クッション、内袋は人の手によって組み立てられる。

機械と手作業の精緻な連携によって、あの3層構造がまるで1枚の紙のような仕上がりへとまとまっていきます。

精度と効率化のアイデア

最後にもう一つ、工程としては最初の方、「型抜き」です。製造の工程はクラフト紙を裁断して畳んで貼り合わせることを想像していましたが、切り落としてしまうと機械の中で紙がバラバラになって詰まってしまうとのこと。それを防ぐためにあえてプラモデルのパーツのように一部が繋がった状態に型抜きをしているそうです。

型抜きされたクラフト紙をまとめて手でむしる工程。なんとも言えない心地よさを感じる。

そして、その不要な部分を人間の手で剥がす「むしる」工程が挟まれるのですが、バサッと落としていく見た目や音が何とも言えない心地よさがあります。ここにも人の手が入っている面白さを、ぜひ動画でご覧ください。

歴史あるメーカーとデザイン会社の協業が生んだ新たな価値

「U」の遊び心ある見た目の裏には、機械任せにしない手作業の精度がありました。
実はこのハトメと紐が付いたマチ付封筒の形は、官公庁や不動産業界での書類のやり取りなど、重要な場面で長年重宝されてきたものです。最近でも、国会に登院する政治家が小脇に抱えている姿が見られるなど、昔から馴染みのある袋として絶大な信頼を集めています。

では、なぜそんな書類保管のプロフェッショナルであるお堅い老舗メーカーが、デザイン会社と組んでPCケースを作ることになったのでしょうか?
100年以上にわたり封筒などを作り続けてきた菅公工業ですが、近年はペーパーレス化による文具離れや、ユーザー層の高齢化という課題を抱えていました。こうした現状を打破すべく、外部のデザイン会社であるTOYBOXと協業することになり、折しも新開発された撥水性のクラフト紙を活用するアイデアとして「PCケース」が提案されました。

若者の間でPCやタブレットが普及する一方で、市場にあるPCケースは「シンプルで無難なもの」ばかり。TOYBOXは、ファッションのように自分らしさを表現して「遊べる」ケースがないことに着目しました。

取材を通じて分かったのは、この「U」というPCケースが、老舗メーカーが長年培ってきた「端ギリギリの糊付け」や「抜け落ちない安心感」といった確かな技術と、デザイン会社の「PCケースでもっと遊ぼう」というアイデアが合わさってできたプロダクトだということです。

手作業の精度が詰まった頑丈な作りでありながら、990円(税込)という手頃な価格でファッションとして気軽に楽しめる。あの不思議な魅力を持ったケースの正体は、老舗メーカーの新たな挑戦でした。

歴史と信頼の頑丈さに遊び心を。ボロボロになるまで「遊べる」PCケース
「U」は990円(税込)という、PCケースとしては非常に手頃な価格で販売されています。
「歴史と信頼のある頑丈なケース」に、ファッションとして持ち歩ける魅力的なデザイン。その2つが高次元で掛け合わさっているのが、このプロダクトの最大の魅力です。編集部としても、紙ならではの「使っていくうちに角がこすれて味が出てくる」経年変化を楽しめる点や、ボロボロになったら消しゴムを使い切るような満足感があって別のデザインを使うタイミングにもなる心地よさを感じました。

また、紙という素材ならではの、リサイクルの優位性も見逃せません。日本は古くから古紙回収の文化があり、紙のリサイクルシステムが社会のインフラとして完全に出来上がっています。そのため、ボロボロになるまで使い倒して手放す際にも環境への罪悪感がなく、気兼ねなくガシガシ使えるという「心理的な身軽さ」もありますね。

ちなみに、ブランド名の「U」は、菅公工業のブランド名である「うずまき」の頭文字から取られています。まずはファッション感覚で「U」を使い倒し、その品質の高さや使い心地の良さを通じて、「うずまきブランド」の確かな技術を感じてもらいたいという思いが込められているそうです。
1枚の紙のように見える不思議なPCケース。皆さんもぜひ、一度手に取ってみてください。そのカサカサとした心地よい手触りからは、「重要書類を扱う現場で使われる商品」の絶対的な信頼感と、「老舗メーカーが長年守り抜いてきた確かなモノづくりの技術」が感じられるでしょう。

Uマルチクッションケース(公式)
https://u-mcc.com/

【取材協力】
企画・デザイン:株式会社TOYBOX
PCケース「U」のデザイン・企画を手掛けたクリエイティブカンパニー。広告やデザインを通じた企業のコミュニケーション課題の解決を得意としており、これまでにも大手飲料メーカーなどとの新ブランド開発などを手掛けている。従来の文具や定番品の枠にとらわれず、若い世代に向けた「遊び心」や「自分らしさを表現するファッション性」をプロダクトに落とし込むデザインを強みとしている。
https://toybox-design.jp/

製造・販売元:菅公工業株式会社
明治42年創業封筒でおなじみの「うずまき」ブランドを展開する紙製品メーカー。おたより(便箋・洋封筒)や冠婚葬祭用の祝儀袋、事務・包装用の「マチ付封筒やクッション封筒」など、幅広い紙製品を手掛けている。官公庁の入札や不動産業界で重宝される重要書類用のマチ付封筒など、長年培ってきた確かな製袋技術を持つ。また、再生紙や「木になる紙」シリーズなど、環境に配慮したモノづくりにも取り組んでいる。
https://www.uzumakikanko.com/

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