初代バチェラーの実業家は、なぜ「持ち物に縛られない人生」にこだわるのか?

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家具と家電のサブスクリプションを展開する会社、クラス(CLAS)が2018年8月に設立されました。事業主は、起業家であり、人気リアリティ番組への出演でも注目を集めた久保裕丈さん。どのようなライフスタイルを提案するものなのか、ご本人に話を聞きました。

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起業の発端「家具を捨てるのに苦労してきたから」

 近年、さまざまな業種で増え続けるサブスクリプション。このサービスを2018年8月より家具と家電で始めた、クラス(目黒区青葉台)をすでにご存じの方も多いと思います。同社の代表は、ファッションECサイト「MUSE&Co.(ミューズコー)」の立ち上げと売却、恋愛リアリティ番組「バチェラー・ジャパン」の初代バチェラーとして知られる久保裕丈(ひろたけ)さんです。

 家具のサブスクリプションは、久保さんのどういったライフスタイル提案として始めたものなのでしょうか。本人にお会いして、話を聞きました。

家具と家電のサブスクリプションを展開する、クラス代表取締役社長の久保裕丈さん(2019年7月9日、宮崎佳代子撮影)

「家具のビジネスを立ち上げたことで、僕自身、家具をとても好きな人間と思われがちです。しかし、好きというより家具で苦労してきたので、同じ思いをしている人たちの課題を解決したいという想いで始めました」

 自社製の家具がゆったりと配置されたオフィスの一室で、端正な顔立ちに笑みを浮かべてそう話してくれた久保さん。ベージュのスーツに白いTシャツというシンプルなコーディネートが、シックな色合いのインテリアに溶け込み、久保さん自身の好みの家具を揃えているように思えました。

「引っ越しの際、毎度面倒なのが家具を処分することでした。その苦労を避けるためにレンタルにしようと思った時、借りたいと思うようなお洒落なデザインのものがなかったんです。

 さらには、予め利用期間を決めなくてはいけなかったり、単身赴任向けに2年と決まっていたりして、途中解約すると高くついてしまい、利用しずらい。その経験がこのビジネスの原点にあります」

 同社では家具のデザインと質にこだわり、その多くを自社で設計して製造。中間コストがかからないために安価で提供することができます。またあらかじめリペアしやすい構造にすることで長く使え、収益性を高めるだけでなく、ゴミ問題の解決も目的としているといいます。

 そのレンタルのシステムは、どのように設定されているのでしょうか。

家具のサブスクは人生の自由度を高くする

 レンタル料は家具によって異なり、月々400円から。配送、設置、保険料すべてが含まれていて、初期費用はかかりません。長期で利用するほど割引率が大きくなり、例えば、レンタル料1か月540円の椅1脚であれば、1年め以降は20%オフで月々432円、2年め以降は50%オフで270円、3年め以降は75%オフで135円。1年め以降は、交換、返却手数料はかかりません。

クラスの自社製レンタル家具(2019年7月9日、宮崎佳代子撮影)

 家具の利用は、1か月から好きな期間を選べ、交換や返却は自由です。ただし、1年未満での交換、返却には、利用期間に応じた手数料がかかります。

 通常使用での不注意による破損や汚損については、修理費用はかかりません。ネコがソファを引っ掻いてしまったという場合でも、修理可能であれば修繕費用がかからないので、ペットを飼っていても安心です。ただし、修理不可能の場合は、最大レンタル料の2か月分と、1年未満であれば返却手数料がかかります。

 レンタルした家具を購入することは不可としています。他社では、家具を気に入ったり長期の使用になる場合は、定価からこれまで支払ったレンタル料を差し引いて購入できるシステムをとっているところもあります。長期でレンタルすると、結果的に買った方が安くなるためです。

「我々が家具の購入を不可としているのは、僕の提案するライフスタイルが、『家具を持たない』ということにあるからです。家具を持たない、イコール家具を捨てないということ。今多い組み立て式のものは安価なものほど解体が難しく、それが大きいものだと引っ越し業者泣かせにもなります。何より僕自身が、家具を捨てる労力やコストが非常に無駄なものと感じてきたので、売ることは考えていません」

 もちろん、家を買ってそこに長く住むのが前提ならば、レンタルはあまりメリットのないものといえます。久保さんが提案するのはあくまで、独身者や単身赴任者、持ち家をまだ考えていない夫婦など、ライフステージの変化が早い、変化する可能性の高い人たち向け。

「家具がなければ、人生の転機に応じて気軽に住まいを変えられる。持ち物に縛られないというのは、人生そのものの自由度にも繋がります」

久保さんはそう話します。

久保さんの現在のライフステージはレンタル、それとも購入?

 サブスクリプションというと、月定額を支払って後は「〜し放題」というスタイルが多くみられますが、家具レンタルにそれを適用するのはさすがに難しい話。家具におけるシェアリングとサブスクリプションの違いはどこにあるのでしょうか。

「シェアリングは、『“モノ”を共有する』こと。サブスクリプションは『“モノ”の利用権をレンタルする』ことなどと表現されます。私は家具のサブスクリプションにはこれに加えてふたつの特徴があると考えています。ひとつはユーザーの必要に応じて商品をアップデートできること、もうひとつは買う以上のメリットを享受できることです。

 日々囲まれているものが新たなものに変わると気分が変わる。それによって、気分が高揚したり、人生に変化が生まれたりもする。家具のサブスクリプションはそんな力が大きく働くものだと思います」

家具のサブスクリプションは「人生に変化を生む力を持つ」と話す久保さん(2019年7月9日、宮崎佳代子撮影)

 クラスは2018年8月に立ち上がったばかりで、商品ラインナップは百数十程度。しかし、量を増やすよりも、使い心地などユーザーの課題をデザインにどう活かしていくかに注力していきたいと話します。「仕事においてユーザーが最も大切」との理念がそこにあるとのこと。

 また近々、家具のコーディネートを無料で行うサービスを展開する予定で、花器やグリーンなどのインテリア小物の販売やサブスクリプションも検討しているそうです。小物はインテリアのオシャレ度をアップしてくれるもの。

 目下のところ、レンタルの需要はベッドとソファーが多いそうで、「僕としては、部屋の雰囲気を左右するライトやランプもぜひ試してみて欲しいです」と久保さん。インタビュー後の撮影時、カメラを向けるとキリッと表情を引き締め、周囲の空気をも研ぎ澄ますような独特のオーラを放つ様子が印象的でした。

 久保さんは現在、自社のレンタル家具を使用した生活だそうです。そのライフステージが「固定」される時がいつなのか、気になる女性も少なくないことでしょう。

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