ショッピングサイトの利用が当たり前になっている現代、実店舗を持つアパレルや雑貨などの小売業界では、店舗とECそれぞれのメリットを活かしたオムニチャネルの構築が課題となっています。その成功事例として、「DXマガジン」ではABC-MARTの躍進を支える「ecbeing」を特集。DX化を加速させるヒントが満載です!
商品を確実に提供するために、オムニチャネル化は必須
服を買いに店舗を訪れたけど、自分の欲しいカラーが置いていなかったため、結局、ショッピングサイトで買うことにした――そうした経験は誰もがあるのではないでしょうか?
店舗、ECサイト、カタログなど、顧客との接点をいくつか持っているにも関わらず、顧客の購買機会を損失しているケースは意外と多いものです。お店で買おうと思っていた顧客にとっても二度手間となり、それは決して良い購買体験ではありません。そうした機会損失を減らし、顧客満足度を向上させる施策として注目されているのが「オムニチャネル化」です。
オムニチャネルは、店舗とECサイトなど、複数のチャネルにまたがっている情報をシステムによって統合し、相互連携させるもの。オムニチャネルの環境を整えることで、在庫管理を最適化し、顧客の望むタイミングや購入方法で、確実に商品を買うことができるようになります。
その店舗×ECサイトの融合にいち早く取り組んできたのが、国内外に1,500もの店舗を展開するエービーシー・マートの代表取締役社長・野口実氏です。
「当社の事業は『お客様のもとに靴を届ける』がすべてです。この可能性を広げる手段としてネットは有効。そう考え、店舗にとどまらない積極策に打って出ることにしました」(野口代表)
2005年にECサイト「Net-MART」を立ち上げたエービーシー・マートは、2010年からecbeing社のEC構築支援プラットフォームを導入。以降、両社は、モバイル用ウェブサイトやアプリの開発など、時代に即したデジタル活用でWin-Winの関係を築いてきました。
ECサイト支援やアプリ開発に携わるecbeing社の代表取締役社長・林雅也氏は、エービーシー・マートの担当役員から「これからは店舗とネットがつながる」といった話を、すでに10年以上前から聞いていたといいます。
「さらに野口社長から、今後はモバイル向けのWebサイトに注力するという話も聞きました。当時はスマートフォンを片手に店内で商品を下調べする人が出始めたころ。こうした人向けにモバイル用Webサイトやアプリを強化すれば効果が現れる。こう話していた野口社長が想定した通りの消費行動が今、当たり前に根付きました」(林代表)
専門チームを組織し、システム開発を大きく加速させたecbeing社
野口代表をはじめとする経営陣の先見性もあって、エービーシー・マートは店舗とECサイトの融合に着手。スタッフ向けアプリも開発し、さらに在庫管理や顧客管理といった基幹システムも刷新しました。
エービーシー・マートは2012年に「iChock(アイチョク)」と呼ばれるサービスの運用を開始していますが、これは店舗で欠品した商品でもECサイトに在庫があれば、自宅へ配送手配し店舗レジで会計できるサービスとして話題になりました。
2018年にリリースされた新たなスタッフ向けアプリは、ecbeing社とともにiChockをさらに進化させたもの。自店舗・他店舗・EC・倉庫といったすべての在庫を、店舗スタッフがスマートフォンで即座に照会できるようになり、店舗では新たな顧客体験が創り出されました。
「店舗スタッフとお客様が一緒にスマートフォンの画面を見て、相談しながら接客するといったスタイルに変わりました」(野口代表)
これまで、在庫の有無を確認するためには、スタッフがバックヤードへ走るのが一般的でしたが、アプリの導入以降、顧客を待たせることもなくなり、より顧客に寄り添った接客ができるようになったのです。
「野口社長を含む経営層が、システムの開発や構築に深く関与しているのが他社との大きな違いです。システムを使って何を目指すのか、ITでどんな課題を解消したいのかなど、システムを開発する当社もエービーシー・マートの狙いを理解しやすく、開発をスムーズに進められたと思います」(林代表)
ecbeing社では社内に専門チームを組織し、エービーシー・マートのシステムを熟知したチームメンバーが一貫して開発や構築に当たっています。システム開発が大きく加速したのは、専門のチームメンバーが、その会社の在庫の呼び方や、一般的に聞きなれない社内用語を理解できるためでもあります。
野口代表も「ecbeingのシステムは使い方を教育せずとも、販売スタッフが自然と使い出している」と、ecbeing社の取り組みを高く評価。現在は、アプリを使って会員サービスを充実させる施策を強化しています。
エービーシー・マートの代表取締役社長・野口実氏と、ecbeing社の代表取締役社長・林雅也氏の対談は「DXマガジン」にて掲載中です。オムニチャネル化にあたってのキーポイントがよくわかる内容ですので、気になる方はぜひご一読ください。
■株式会社エービーシー・マート
https://www.abc-mart.net/shop/
■株式会社ecbeing
https://www.ecbeing.net/