上野公園のすぐ近く 2004年廃止の「博物館動物園駅」に再び注目が集まっているワケ

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上野動物園などの最寄駅として利用されながらも、2004年に廃止となった博物館動物駅に再び注目が集まっています。いったいなぜでしょうか。フリーランスライターの小川裕夫さんが解説します。

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1997年に休止、2004年に廃止

 成田空港へのアクセス鉄道として知られる京成電鉄は、京成上野駅をターミナルにしています。その京成上野駅から約1キロメートルしか離れていない場所に、旧博物館動物駅(台東区上野公園)があります。

博物館動物園駅の外観(画像:小川裕夫)

 博物館動物園駅は、東京国立博物館や東京都美術館、国立科学博物館、東京藝術大学、上野動物園などの最寄駅として利用されてきました。

 しかし、高度経済成長期に京成電鉄の利用者数が増えると、京成電鉄は輸送力を強化する必要に迫られました。一回の運行で多くの乗客を運べるように、京成電鉄は電車を長大化しました。一編成6両になったことで、輸送力は向上。その一方で、新たな問題も起こりました。

 博物館動物園駅のホーム長は4両分しかなく、長大編成化した6両編成の電車は停車できません。そのため、普通電車でも通過するようになったのです。一部の普通電車でさえ通過するようになったため、博物館動物園駅の利用者は低迷。存在意義を失った博物館動物園駅は、1997(平成9)年に休止。そして、2004年に正式に廃止されました。

 博物館動物園駅の駅舎は、国会議事堂を彷彿とさせるデザインをしていました。それが、地元住民に親しまれる理由にもなっていました。そのため、地元住民を中心に駅の廃止を惜しむ声が多く寄せられます。そして、駅が廃止された直後から、有識者も加わって再活用・保存が模索されたのです。

 駅が廃止されたとはいえ、路線が廃止されたわけではありません。電車はホームの横をひっきりなしに走っています。部外者がホームへ立ち入ることは危険を伴います。安全運行の面からも、博物館動物園駅は人の立ち入りができないようになり、長らく物置小屋として放置されていました。

 しかし、地元住民やNPOなどが粘り強く交渉をつづけました。2018年に駅舎が東京都選定歴史的建造物に指定されたことを機に、博物館動物園駅を再活用する機運が高まりました。

 そして、同年秋には劇作家の羊屋白玉(ひつじや しろたま)さんや造形作家のサカタアキコさん、国立科学博物館支援研究員の森健人さんたちの作品を展示する会場として活用されました。これを皮切りに、博物館動物園駅では芸術作品の展示イベントが開かれるようになりました。

歴史的建造物の保存・活用の先例になる可能性も

 2019年10月18日(金)からは、スペイン人アーティストのクリスティーナ・ルカスさんとフェルナンド・サンチェス・カスティーリョさんによる「想起の力で未来を・メタル・サイレンス2019」を開催。同イベントの会期は11月17日(日)までの1か月で、金・土・日と祝日のみの開催です(10月22日は除く)。展示される作品も魅力的ですが、作品の鑑賞だけではなく博物館動物園駅も堪能してほしいコンテンツです。

威厳が伝わってくる博物館動物園駅跡のプレート(画像:小川裕夫)

 固く閉ざされた博物館動物園駅は再活用されるようになりましたが、その扉はイベント開催時にしか開かれません。普段は外から眺めることしかできないのです。イベント開催は駅舎の内部に立ち入ることができる、またとないチャンスでもあります。

 展示スペースは踊り場まで。透明の壁が設けられている先には、立ち入ることができません。ホームへ降り立つことはできませんが、それでも仕切られた透明な壁からホームを垣間見ることはできます。博物館動物園駅を利用した経験がある人にとって、それは感慨深い光景に映るでしょう。当時を知らない人にとっては、貴重な体験です。

 老朽化したことで建て替えられたり、防火・耐震基準が時代に適合していないことを理由に取り壊されたりする駅舎が多い中で、東京都内には赤レンガでお馴染みの東京駅、味わいのある雰囲気を放つ木造の原宿駅、三角屋根で親しまれた国立駅などが歴史遺産として大事にされています。博物館動物園駅も大事にされている駅舎のひとつですが、駅として役目を終えた後も再活用されることは珍しいケースです。

 駅舎のみならず、東京には老朽化している歴史的建造物がたくさんあります。それらを取り壊すことは簡単です。しかし、行政は歴史を後世に伝えるという文化的・教育的な役割を背負っています。歴史的建造物を保存することは、行政の使命でもあるのです。

 昨今、財政難などを理由に歴史的建造物の保存が叶わないケースも出てきています。それだけに、博物館動物園駅は保存・活用の先例になるかもしれません。

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