就職率がなんと9年連続1位 詩人が作った「昭和女子大学」とはどのような大学なのか

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東京・世田谷に驚異の就職率を誇る大学があります。その名は昭和女子大学。いったいなぜでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します

目次

実就職率「97.3%」という驚異

 大学を評価する際に一般的に注目される指標といえば、偏差値のほか「就職率」が挙げられます。

 そんな就職率において、驚異の実績を上げている大学が都内にあります。1920(大正9)年創立の昭和女子大学(世田谷区太子堂)です。

昭和女子大学の外観(画像:(C)Google)

 昭和女子大学は卒業生1000人以上の女子大学を対象とした実就職率で「97.3%」と9年連続1位となっており、また全国の国公私立大学(共学含む)の中では4位となっているのです。なお実就職率とは、

・就職者数 ÷ (卒業者数 ー 大学院進学者数)

で表される数値のことです。

 ということで今回は、2020年に創立100周年を迎えた昭和女子大学が驚異の実就職率をたたき出している秘密を探っていきます。

詩人・新聞記者が創立した大学

 日本は1800年代後半から1900年初頭にかけ、来日した宣教師や教育者らによって、女子教育のための私塾などが次々と設立されました。

 しかし、昭和女子大学は他の教育機関とは一風異なります。詩人であり、新聞記者の人見圓吉(ひとみ えんきち)が1920年、世に役に立つ女性を育成しようと創立したのが始まりです。

 人見は校名を「日本女子高等学院」とし、建学の精神としてロシアの文豪トルストイの思想である、質素な生活の中でも弱者に手を差し伸べる、キリスト教的な志を掲げました。当時のいわゆる良妻賢母の養成所としての性格は、ほとんどなかったのです。

トルストイの著作『光あるうち光の中を歩め』(画像:新潮社)

 当初、文京区に校舎を建てたものの、手狭になったことから中野区、そして終戦後に三軒茶屋駅から徒歩数分の場所に移転。1949(昭和24)年に新制大学(第2次分)として、昭和女子大学になりました。

 現在、国際学部、グローバルビジネス学部、人間文化学部、人間社会学部、生活科学部、環境デザイン学部の計6学部14学科から構成されており、2019年度の学生数は5895人(大学のみ)です。

 都心の一等地にある敷地内には付属学校のほかにもテンプル大学ジャパンキャンパスの東京キャンパス、ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和のキャンパスがあり、国際豊かな雰囲気となっています。

坂東学長就任で訪れた変化

 そんな昭和女子大学の大きな転機となったのは、総理府(当時)や内閣府で男女共同参画に長年関わってきた坂東眞理子さんを2003(平成15)年10月、理事として招いたことです。

現在は大学理事長・総長を務める坂東眞理子さん(画像:都ホテルズ&リゾーツ)

 坂東さんは2007年4月から学長として改革を推進、大学卒業後に社会で自立できる女性を育てることを重視する方向へ、方針をシフトチェンジしました。

 在学生だけではなく、卒業生も対象としたキャリア支援センターを設立し、手厚いサポートを前面に打ち出しました。また年間8000件以上の個人面談や模擬面接の実施、大学オリジナルのインターシップ受け入れ企業も紹介しています。

 昭和女子大学は筆記試験や面接といった、OGたちの内定までの道のりが詳細にわかるデータを持っており、就活生に「就職活動のリアルさ」をイメージさせやすい取り組みを行っています。

 他の大学では主に論文作成を目的としたライティングサポートでも、昭和女子大学はエントリーシートや履歴書の記述に特化したものとなっています。

 見落とされがちですが、文章力は志望者の第一印象を決めるとても重要な力です。就職率アップの鍵はある意味、思い切って実務的なライティングサポートに特化したからかもしれません。

高い就職率で志望者も増加

 坂東体制となった翌年の2008(平成20)年にはリーマンショックが発生し、2010年から2013年にかけて就職難の時代がやってきました。しかし昭和女子大学が就職率を向上させ、女子大学の中で1位となったのも、実はこの時期からなのです。

就職活動にはげむ女子大生のイメージ(画像:写真AC)

 不況のあおりを受ける以前から就職に向けた支援を行ってきたことで、買い手市場の荒波を乗り越える力を身に着けていきました。2013年度に初めて、卒業生1000人規模の全大学を対象とした実就職率調査で10位にランクインをするなど、改革の努力が実ったのです。

 その後、実就職率は常に90%以上をキープし、「就職に強い昭和女子大学」というイメージを定着することに成功しました。

1000人以上増えた入学志望者

 こうした実績を積み重ねていったことで、少子化の中でも志望者数は年々増加しています。直近3年のデータをみても、2017年度から2019年度で志望者は1000人以上増えており、人気の高まりを裏付けています。

志望者数増加のイメージ(画像:写真AC)

 単に就職の数字が良いだけではなく、入学間もない1年時から全学部学科必修のキャリア入門を受講させ、卒業後のキャリア育成を意識させることで、早い段階から就職活動への心構えを作る努力を行っています。これも大学を選ぶ際のポイントになっていると考えられます。

 女子大学という強みを生かし、全ての学年で「21世紀の女性の働き方」に特化したキャリア教育を学ぶことができるのです。

これからの不透明な時代、人気は高まるか

 ここ数年続いていた売り手市場は、新型コロナ禍により一変の様相を呈しており、氷河期再来になるのではと不安視されています。

 就職率が高い大学でも、新型コロナ禍で例年通りに就職活動がうまくいかない可能性もありますが、昭和女子大学は「オンライン就職活動支援」と題し、教員やキャリアカウンセラーによる、ひとり45分の個別相談を実施し、不安の解消や身動きできない学生に向けて支援を続けています。

昭和女子大学のウェブサイト(画像:昭和女子大学)

 新型コロナ禍で先行き不安を抱え始めた受験生や保護者は、昭和女子大学に対して「サポートの厚い大学」と期待し、人気を集めることが今後予想されます。

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