銀座で江戸にタイムスリップ!? 初心者も一度見れば必ずハマる“今どき”歌舞伎案内

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『ワンピース』や『ファイナルファンタジーX』など、漫画やゲーム作品との話題のコラボで新たな観客を虜にし、進化し続ける歌舞伎の世界。2013年にリニューアルされた歌舞伎座も、銀座の映えスポットとして人気を博しています。そんな今をときめく歌舞伎の楽しみ方について、歌舞伎俳優・市川九團次さんに聞いてみました。

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歌舞伎初心者でも楽しめる、話題の新作が続々登場!

見得を切る市川九團次さん

 400年以上の歴史を持つ日本を代表する芸能・歌舞伎は、今なお多くの観客を魅了し、世界でも高く評価されているエンターテインメント。

 しかし、伝統的な側面があるがゆえに「どんな演目から観ればいいの?」「予習は必要?」「そもそもどこで上演してるの?」などといった疑問から、観に行くのに二の足を踏んでいる方もいるかもしれません。

 「そうした初心者の方には“スーパー歌舞伎”のような新作歌舞伎から入るのもいいと思うんですよね。そこからだんだん古典作品に興味を持つ人もいるでしょうし、新作歌舞伎はセリフもストーリーもわかりやすいですから」

 そう語るのは、市川團十郎一門の実力派歌舞伎俳優として活躍する市川九團次さん。

 江戸時代から続く古典歌舞伎は歌舞伎座で上演されることが多く、当時の世界観や雰囲気が楽しめるのが魅力ですが、反面、とくに時代物(江戸時代より前の時代を舞台とする作品)は、セリフが武家社会の言葉なので聞き取りづらいというハードルもあります。

 また、古典歌舞伎の場合、チラシを見ると「昼の部・夜の部」や「一部・二部・三部」と書いてありますが、例えば昼の部で上演される3本は、それぞれ違った演目の人気の場面を集めたプログラムであることも多く(この上演形態を「見取り狂言」といいます)、必ずしも1本のストーリーを通して上演するわけではありません。

 一方、近年の新作歌舞伎は、人気漫画の『ワンピース』やスタジオジブリの名作『風の谷のナウシカ』など、現代の娯楽作品とのコラボが次々登場。初音ミクらボーカロイドと歌舞伎俳優が最新テクノロジーで共演する「超歌舞伎」も新たなファン層を獲得しています。

 こちらは普通のお芝居と同じように、昼でも夜でも1回観ればストーリーが完結するものがほとんどですので、歌舞伎を観たことがない人でもすぐ親しめるでしょう。

 「新作歌舞伎は、新橋演舞場や明治座、渋谷のシアターコクーンや六本木EXシアターなどで上演されることが多いです。分かりやすく言うと、古典を観るなら歌舞伎座、新しいコラボ作品などを観る場合はそれ以外の劇場、というように覚えておくといいですね」(九團次さん)

 2023年は、3月に尾上菊之助や中村獅童らが出演する『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』(IHIステージアラウンド東京)、7月に尾上松也・尾上右近出演の新作歌舞伎『刀剣乱舞』(新橋演舞場)が上演されるなど、歌舞伎界は話題の新作がめじろ押しです。

古典歌舞伎の魅力はタイプスリップしたかのような非日常感!

 一方、古典歌舞伎の魅力は「江戸時代にタイプスリップしたかのような非日常感」にあると、九團次さんは語ります。

 「とくに歌舞伎座は劇場からすごい。あの風情のある建物の前で写真を撮るだけでも映えて楽しいですし、公演の華々しい雰囲気から楽しんでほしいです。歌舞伎座は舞台機構もふつうのホールと違って花道があったり。花道そばの席ならめちゃめちゃ近い距離で役者さんの汗や息遣いを感じることができますよ」(九團次さん)

 もともと踊りや歌が源流となっている歌舞伎は、舞台に流れる音楽も生演奏。鮮やかな色彩と刺繍で作られた豪華絢爛な正絹の衣装も、観客を惹きつけて止みません。

 舞台のセットのひとつひとつや、小道具、かつらなども、伝統を受け継ぐ国宝級の職人技によって作られています。まさに“日本の粋”を舞台の隅々まで感じられるのが、古典歌舞伎の魅力と言えるでしょう。

 「それと、歌舞伎ならではの醍醐味と言えば“大向こう”と言われる掛け声ですよね。人が演じてる最中に『成田屋!』とか『待ってました!』なんて声をかける演劇って他にないでしょう。初めて歌舞伎を観に来た若い人は、びっくりして振り向いたり、思わず笑っちゃったりすると思いますが、酔っ払いがヤジ飛ばしてるわけじゃないんです(笑)。お客さんも含め、みんなで盛り上げるというか、歌舞伎ってわりとラフな部分も多いんですよ」(九團次さん)

 歌舞伎のことをしっかり理解しながら鑑賞したい人には、歌舞伎座で貸し出しているイヤホンガイドの利用もおすすめ。配役やあらすじ、時代背景、衣装、化粧、音楽など、丁寧に解説してくれます。

ハマるきっかけは、推しの役者を見つけるのが一番

九團次チャンネルでの一幕

 「歌舞伎を観るためには、何かしらのきっかけが必要なんですよね。例えば、歴史や時代劇が好きな人であれば、歌舞伎にもすぐ興味を持てると思いますし、最近では刀剣好きの女子が刀を入り口に歌舞伎を観に来てくれたり、ファッションに興味のある人なら衣装から入ったり。でも、一番のいいきっかけは俳優さん。やはり歌舞伎は役者を観に行く芝居でもあると思いますので」(九團次さん)

 例えば、1月に新橋演舞場で行われた市川團十郎襲名記念プログラム『SANEMORI』では、アイドルグループ「Snow Man」の宮舘涼太が出演。木曽義仲・木曽先生義賢といった二役を熱演したことが話題となりましたが、同じ舞台に出演していた九團次さんも、その反響のすごさに驚いたと言います。

 「何カ月も前から準備して、歌舞伎の重要な二役を演じ切るという宮舘君の大挑戦ということで、多くのファンが劇場に駆け付けてくれたんですよね。僕のSNSにも『宮舘君きっかけで観に行きましたが、歌舞伎に出会えて本当によかった』、『これからは九團次さんの歌舞伎も観に行きます』というような声を頂いて、本当にうれしかったですね」(九團次さん)

 近年は、ドラマや映画、テレビ番組への出演でお茶の間に知られる歌舞伎俳優も多く、逆に「六本木歌舞伎」などでは、元V6の三宅健やA.B.C-Zの戸塚祥太らが古典歌舞伎に挑戦するといった試みも行われています。

 「中には、演目から選んで観る人もいるかもしれませんが、やはり歌舞伎ファンに一番多いのは『来月、團十郎が出るんだって!』、『團十郎観たいね!』といった会話があって、その後に『演目は何?』みたいな流れ。歌舞伎のことをそこまで深く知らなくても、役者さんの一ファンとして観に行くだけで、歌舞伎の魅力は十分に感じて頂けると思うんですよ」(九團次さん)

 歌舞伎と出会うきっかけ作りという点では、市川九團次さんもSNSでの情報発信に力を入れています。とくにコロナ禍をきっかけにスタートさせたYouTubeチャンネルは、じわじわとファンが拡大。先月からは仲間とリニューアルを果たし、九團次さんが浅草地下街でビリビリの電気気功に悶絶したり、サムライ姿でバッティングセンターに乗り込んだりといった、お笑い満載のチャンネルとなっています。

 「今後、予定しているのは999人に隈取をしちゃおうという企画なんです。歌舞伎を知らない人でも、なぜか隈取のメーキャップはみんな知ってますよね。だから、僕が化粧道具を持って、浅草寺とかWBCのようなスポーツの世界大会とか人の集まるところに行って、誰でも隈取していいよと(笑)。外国人観光客もまたたくさん来るでしょうし、今の若い人たちの情報源はSNSですから。そういう企画から僕のことを知ってもらったり、歌舞伎に興味を持ってもらえたら面白いんじゃないかな」(九團次さん)

九團次チャンネルでの一幕

市川九團次 公式YouTubeチャンネル
>>九團次チャンネル
 

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