1958年の開業以来、60年以上にわたって愛されてきた東京のシンボル「東京タワー」が、2022年4月、一大刷新を迎えます。フットタウンに新設される予定なのは、eスポーツを軸とした巨大エンタメ施設。その全容と今後の展望について、運営会社のトップに聞きました。
1・3~5階部分に巨大eスポーツ施設
東京はもちろん日本のシンボルとして、開業以来60年以上にわたって愛され続けてきた東京タワー(港区芝公園)。その東京タワーが2022年4月、一大刷新を迎えます。
展望台下にある商業フロア「フットタウン」のうち、1・3~5階部分に延べ約5600平方メートルに及ぶ巨大eスポーツパークがオープン予定。流行に敏感な10代後半から30代前半、ファミリー層などを主なターゲットに、eスポーツや各種エンタメ要素を盛り込んだ施設が誕生します。
展望台と並ぶ東京タワーの目玉スポット、フットタウンが描く今後の展望について、新施設を運営する東京eスポーツゲート(同区芝公園)の原康雄 社長に聞きました。
コロナ禍で閉園した「ワンピース」跡地
東京タワーは1958(昭和33)年12月に開業した高さ333mの電波塔。地上150mと250mの高さにそれぞれ展望フロアがあり、都内有数の観光スポットとして変わらぬ人気を誇ります。
東京eスポーツゲートが手掛けるeスポーツパーク「RED°TOKYO TOWER」の計画が持ち上がったのは2020年の夏。それまで入居していた人気アニメ『ONE PIECE』(尾田栄一郎さん原作)のテーマパーク「東京ワンピースタワー」が新型コロナウイルス感染拡大の影響により閉園したことがきっかけとなりました。
東京eスポーツゲートの原社長によると、RED°の施設コンセプトは「GAME CHANGE」。
最新ゲームタイトルの体験エリア、eスポーツ大会や音楽ライブ、ファッションショーなど多様なイベントを開催できるアリーナ、さらに配信スタジオやグッズショップ、飲食店などを備えた事業計画を掲げます。
同社は東京タワーを運営するTOKYO TOWER(港区芝公園)から商業施設部分を借り受け、既存フロアの改修に着手。2022年2月のプレオープン、同4月のグラウンドオープンを予定しています。
エンタメとテクノロジーの総合施設
とりわけeスポーツは、世界的に市場の拡大が続いている成長分野。2021年9月3日(金)配信のNIKKEI BUSINESS DAILY(オンライン、有料版)によると、世界のeスポーツ市場は9億4000万ドル(約1000億円)。観戦者などファンを含む総人口は、野球(5億人)に迫る4.7億人とされています。
一方、経済産業省と日本eスポーツ連合が2020年3月にまとめた資料では、国内の市場規模は2018年時点でおよそ44億円にとどまり、2025年には600~700億円まで伸長させるとの目標を立てるものの、世界と比べるとまだ法整備などの課題があるのが現状です。
そのため「RED°のコンテンツ立案にあたっては、より日本人の嗜好や好みに合わせたスタイルにしていく必要があると考えました」(原社長)。
eスポーツを軸としつつも、現状でユーザーがより多いソーシャルゲームや、囲碁・将棋など伝統的なボードゲーム、また“推し活”と呼ばれるカルチャーを生み出したアニメや漫画、音楽、YouTuber、VTuberとのコラボレーションなど、横断的な各ジャンルをRED°の重要な柱に据えるといいます。
3~5階それぞれの計画と狙い
3階にはデジタル演出による総合エントランスを整備。2000~2500円の入場料(予定)を支払いゲートをくぐると、ラウンジフロア「インスピレーションゾーン」に続きます。
壁面や天井、床に施されたデジタルパネルでは、スポンサーとのコラボや各分野のクリエーターによるデジタルコンテンツを展開。ライト層も楽しめるゲームのほか、ミュージアムやショップなどの機能も備える予定です。
4階の「アトラクションゾーン」では、テクノロジーを駆使して人間の身体能力を拡張する超人ゲームなど、身体性のあるeスポーツ体験コンテンツを導入予定。
5階は「アルティメットゾーン」。200~250人を収容できるメインアリーナは、eスポーツ大会の観戦・配信だけでなく音楽ライブやファッションショーなど幅広いエンタメ発信のためのステージとして活用。
サブアリーナにはeスポーツのコアなファンも楽しめる最新のPCが並ぶほか、子どもを対象としたプログラミング教室も開催するとしています。
そのほか同フロア内にはeモーターゾーンやバーなどを設け、eスポーツに対する関心の深度にかかわらず幅広い年代・性別・属性の来場者が楽しめる空間の創設を目指すとのこと。
年間来場者数は「100万人」を目標に掲げました。
愛された「昭和のムード」残る空間
1958(昭和33)年の東京タワー開業以来、フットタウンにはいくつもの個性的な施設が入居してきました。
ろう人形館(1970~2013年)や、水族館(1978~2018年)、キーホルダーなどの雑貨を扱う小さな店舗がいくつも密集する「東京おみやげたうん」などは、今も記憶に鮮明です。
東京都心の一等地に建ち、洗練された都会の景色を象徴する東京タワー。その内部に残る昭和のままのムードをたたえた空間は、ときに“珍スポット”などとも呼ばれ、独特の懐かしさとともに人々に愛され続けてきました。
しかしそんな都内有数の名所も、2020年からの新型コロナ禍で大きな打撃を受けます。
先述の通り、2015年3月に開園した「東京ワンピースタワー」は「屋内施設という場所柄、サービス提供の継続が難しい」との理由から2020年7月末に閉園しました。集客のため、新たなコンテンツの投入が期待されていました。
東京タワーはどう変わるのか?
誰もが知る東京タワー内のフットタウンを、今後どのような場所として位置付けていこうと考えているのか。あらためて原社長に尋ねました。
「東京タワーは誰しも必ず『見たことがある』『すてきだ』といいますが、実は実際には行ったことがないという人が少なからずいる場所でもあります。一方で、東京スカイツリーの中にある『東京ソラマチ』は、行ったことがあるという人が多い。コンテンツの力によるところも大きいのかもしれません」
「今後RED°のオープンによって、東京タワーへ実際に行ってみたい、行ったことがあるという場所に変えていきたいと考えています」(原社長)
施設の名称RED°は、東京タワーの基調色かつ日本を想起する色でもあり、さらに温度や熱量も表す意味とのこと。
増上寺やプリンスホテル、芝公園など、周辺を一体化させたイベントも開催し、エリアそのものの活性化も狙います。
令和時代に刷新を迎える東京タワー。どのような姿に変貌を遂げるのか注目が集まります。