芸能人が続々とYouTubeに進出する昨今、その波は歌舞伎の世界にも押し寄せています。歌舞伎俳優が開設したチャンネルの中でも注目されているのが、この度リニューアルした市川九團次チャンネル。一体どんなチャンネルなのか、ご本人の市川九團次さんを直撃しました。
コロナ禍がチャンネル開設のきっかけに

歌舞伎俳優としてのキャリアを積み、2015年に四代目市川九團次を襲名。現在は市川團十郎一門として、国内各地の歌舞伎公演で舞台を務める市川九團次さん。活躍の場はドラマやバラエティーなど歌舞伎以外にも広がっています。
そんな九團次さんがYouTubeチャンネルを開設したのは、2020年の夏。今は芸能人も続々と参入している時代とはいえ、どんなきっかけがあったのでしょうか。
「コロナ禍で歌舞伎公演が次々に中止となりました。歌舞伎俳優という仕事は、舞台に立てなければお客さまと交流することができません。なにかコミュニケーションをとる方法はないかと思い、始めたのがYouTubeでした」
歌舞伎以外の仕事で、九團次さんは自分の想像をはるかに超える形で注目を集めたことがあるといいます。それは、5年前に出演したライザップのコマーシャルでした。
「あの時は歌舞伎の人としてではなく、ライザップの人として多くの人に認識されました。歌舞伎はこちらから世の中に売り出すのが難しい部分があって、舞台を見て初めて知っていただくわけですけれど、コマーシャルの影響力はすごかった。同じようにYouTubeもすべての人に門戸が開かれています。だから自分のチャンネルを窓口にして、歌舞伎に興味を持つ人が出てくるかもしれない。そんな思いもありました」
仲間が増え、チャンネルをリニューアル

YouTubeで市川九團次チャンネルを開設し、動画の投稿を始めた九團次さん。手探りしながらのスタートで、しかも撮影や配信をするのはすべて自分ひとり。いろいろと企画やアイデアが浮かぶものの、ひとりでできることには限界がありました。
「動画を作るのは大変だし、お金にもならない。周りをみれば、YouTubeを始めたけれどやめてしまう人も多い。でも、自分はお金を稼ぐのが目的ではありません。だから地道に続けました」
やがて、九團次さんの思いに賛同する人が出てきます。YouTubeをともに作ろうという仲間です。
「一緒に企画を考えてくれたり、動画を撮影してくれたり。これまではやりたくてもできないことがあったけれど、可能性が一気に広がった。だからコンセプトを改めて整理して、チャンネルをリニューアルすることにしたんです」
新生・九團次チャンネルのテーマは、ズバリ「身体を張った体験」だといいます。まず、その設定がユニークです。登場するのは、なんとサムライ。粋な着物姿の九團次さんが、名もなきサムライを演じます。
「サムライが現代の街でさまざまな体験をする様子は、純粋に楽しんでもらえると思います。僕は着物を着慣れているし、舞台でサムライを演じることもあるので、ごく自然なこと。外見だけでなく、気持ち的にも時々サムライになりたいですね。何か食べたら『あ~、美味じゃ』とか」
サムライといえば、どんな試練にも耐え抜こうとする強靭な精神を持つ男。そんなイメージもうまく利用したいそう。
「ロケ中に無茶振りをされることがあるかもしれません。でも、サムライなのでノーはない。二郎系のラーメンを食べられる?と聞かれれば、もちろん、と。でも、苦しんじゃったり。いずれ『YouTubeのサムライといえば九團次チャンネル』と思われるくらい、積極的に発信していきたいですね」
九團次という名前よりもサムライであることを優先させ、辛い体験も厭わない。九團次さんのYouTubeに対する本気度が伺えます。
目指すのは旅先案内人

主役をサムライにすることで面白さを担保しつつ、九團次さんが本当に伝えたいことは別にあります。それは、チャンネルを見てくれる人の旅先案内人になること。東京をベースに全国を公演で巡る九團次さんは、日本のよさをどんどん発信したいと考えていました。
「どこかへ遊びに行くときは、まずYouTubeでサムライの動画をチェックしようか。そんなチャンネルにしたいと思っています。見る人が使いやすいよう、ひとつの駅で一本の動画を作っていく。駅周辺をサムライが歩き、実際に体験したことを伝えます」
リニューアル一回目に出掛けたのは、浅草でした。どんな場所を取り上げたのでしょうか。
「アンダーグラウンド。浅草地下商店街です。現存する地下街の中では国内最古といわれています。誰もが知ってる王道スポットもいいけれど、浅草にはこんな場所もあります!ということで。サムライ姿でロケをしました」
浅草地下商店街で訪れたのは、占いカフェとタイ古式マッサージ、そして忍者バー。なぜそこに?という疑問も含め、興味津々なラインアップです。
「お店に入り、リアルな体験をして、その街の魅力を伝えるのが醍醐味です。マッサージでは自分の悲鳴が地下街に響き渡る一幕もありました(笑)。浅草の知られざる一面を見ていただけると思います」
世界で注目されるチャンネルに

駅を起点に街を紹介するのは、コンテンツの一部分。他にもチャレンジしたいことはたくさんあるといいます。
「例えば、お買い物企画。サムライ鉄の馬を買う、とか。鉄の馬って実は高級車で、いや買えるのか?とか。馬といえば、暴れん坊将軍のあの名シーンを撮影したいですね、乗馬しているところ。でも、練習が必要だから乗れるようになるまでの過程も収録して。自分の体を張った体験を、一緒になって楽しんでほしいと思います」
見てほしいのは国内の人だけでなく、海外の人も。九團次さんはそう言います。そのため、海外のユーチューバーとコラボしたり、英語のテロップを入れたりすることも考えているそう。
「九團次チャンネルを見て歌舞伎に興味を持ちました、そんな声が国内外で聞かれるようになったら、これほどうれしいことはありません」
新たにスタートしたYouTubeの九團次チャンネル。誰よりもご本人が期待感でいっぱいの様子。これからどんな動画が続々と投稿されるのか、目が離せません!
■市川九團次 公式YouTubeチャンネル
>>九團次チャンネル